見るべきものは数字ではなく校風
そんな頭が凝り固まったお父さんをどうやったら変えられるか?
まず、SAPIX偏差値表だけを見ず、四谷大塚偏差値、日能研偏差値、首都圏模試偏差値も見てください。頭では分かっているかもしれませんが、実際に数字を出して見比べてみることが大事です。偏差値表は各塾のホームページからダウンロードできますので、プリントアウトして並べて見比べてみてください。
次に、もし高校募集も行っている学校なら、高校受験時の偏差値も見てください。こちらもネットでいくらでも検索できます。例えば、城北は中学受験ではSAPIX偏差値44の学校ですが、高校受験になると偏差値72の難関校になります。同じように中学受験では偏差値38の成蹊は高校受験では偏差値60後半になります。
中学受験をする子というのは、小学校では優秀な子がほとんどです。高い学力の中での戦いは、偏差値が低くなります。一方、高校受験はその他大勢の子が受ける受験です。そのため、偏差値も高く出ます。つまり、受ける集団が変われば、偏差値も変わるということです。中学受験ではSAPIX偏差値40台の学校は、高校受験では偏差値70レベルの学校になっているということをぜひ知っておいてください。
そして、最後に大学実績を見てください。先にお伝えした城北、攻玉社、桐朋、鴎友を見ていただくとわかりますが、中学受験でSAPIX偏差値40台といわれる学校でも、旧帝大、早慶、医学部、GMARCHに多くの子が合格しているという事実を把握しておくことです。そうすれば、むやみに悲観することはありません。そして地方公立トップ校と比べてみてほしいのです。決して遜色のある数字ではなく、むしろ上といえる場合も多いでしょう。
でも、本当に大事なのはこうした数字ではなく、その学校の校風です。そもそも中学受験をさせたいと思ったのはなぜですか? おそらくわが子をより良い環境で学ばせたいという思いがあったからではありませんか? では、お子さんにとってよい環境というのは……?
それは、お子さんが自分らしく過ごせる場所です。そして、お子さんの魅力を認め、それを伸ばしてくれるところこそ、お子さんにとって最も良い環境と言えるのではないでしょうか? その視点がスッポリと抜け、目の前の数字だけに囚われてしまうと、これから大きく伸びていくはずの芽を摘んでしまうことになります。
6年生の受験生はこれから模試が続き、嫌というほど数字を突き付けられます。そんなときこそ、親は冷静な目を持って、「この子にとってベストな学校はどこだろう?」という視点を忘れずに、お子さんのサポートをしてあげてください。本当にいい学校というのは、偏差値や合格実績といった数字ではかれるものではなく、そこに通うお子さん自身が感じることです。
(構成・石渡真由美)
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