2024年4月27日(土)

Wedge REPORT

2019年12月10日

ちょっとした仕掛けで参加者のやる気を引き出す

 ボランティアのトレーニングは任意参加であり、本番の活動日も交通費は出ない(弁当等は支給)。そうした中、ボランティアのモチベーションを上げるために、ちょっとした仕掛けも用意されていた。

組織委員会のメンバー(左から佐藤氏、デボラ氏、真鍋卓也氏)(写真・Wedge)

 集合トレーニングは、オリエンテーションを含め、活動別や会場別などに分けて4日間設定されたが、トレーニングを受ける度に、参加者にはレコグニション(承認)として色違いの4つのピンバッジが与えられた。そのバッジの数が増えると、リーダーやエキスパートへと「昇進」していく。「トレーニングではオペレーショナルなことを学んでもらいましたが、あくまでも特別な雰囲気の中で楽しんでもらうことを重視しました」(デボラ氏)。

 同様にEラーニングを終えると、組織委員会の名刺データをダウンロードできるようにして、そこに自分の名前を入れて配れるような仕掛けも準備された。これは名刺文化が根付く日本ならではの取り組みだという。

 そして、ボランティアには運営スタッフと同じユニホームとカバンが支給された。活動中だけでなく自宅と会場までの行き来もユニホームを着用することになっていたが、ユニホームを着用していると、街中でたくさんの励ましの声をかけられたり、帰りの電車で席を譲られたりするケースも多く、活動に「誇り」を感じるキーアイテムになったようだ。

積み上げたレガシーを地域と後世にどう残す

 大会期間中には台風19号が日本列島を縦断し、日本代表の決勝トーナメント進出をかけたスコットランド戦も、台風が過ぎ去った直後に開催された。ボランティアには前日、開催が決まっても無理して来ないようにメールで周知されたが、当日は94%もの人が参加した。また、活動が割り当てられていないボランティアからも参加の申し出が多数寄せられ、逆に断ったほどだという。ワンチームとなった組織の力を示すエピソードである。

 「今後は高いポテンシャルのボランティアを各地域の活動で生かしてほしいと願っています。ただ、組織委員会が大会後のレガシーまで描き切れていないことが心残りです」と佐藤氏は悔やむ。「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」との大会キャッチコピーのように、一生に一度で終わらせないことが確かに大事である。

 W杯の決勝戦を含む7試合が行われた横浜では、2002年のサッカーW杯開催を機に地域のボランティア組織が立ち上がった。その後もJリーグや陸上競技などのスポーツイベントを支えるボランティア320人が現在も活動しており、ラグビーW杯にもそこから120人が参加した。今回のレガシーが、来年の東京五輪・パラリンピックへと継承されていくことになるだろう。

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