東日本大震災の津波により壊滅的な被害を受けた岩手県釜石市。2015年3月にラグビーワールドカップ(W杯)の開催地の一つに決まったこともあり、復興は急ピッチで進んできた。
特に目を引くのがインフラの整備状況だ。三陸沿岸道路(復興道路)は、今年6月に宮城県境から釜石、宮古に至る県南部が一本でつながった。また、三陸沿岸部と内陸部を結ぶ東北横断道(復興支援道路)の花巻~釜石間80キロの全線が今年3月に開通。震災前に2時間近くかかった花巻までの所要時間は30分以上短縮された。
W杯の試合当日も大勢の観客が、新幹線と高速バスを乗り継いで、日帰りで応援に駆けつけたように、「陸の孤島」と言われてきた釜石が、東京の日帰り圏にギリギリ組み込まれた。
この道路整備の恩恵を特に受けているのが、震災後に急成長を遂げている港湾事業である。釜石港の2018年のコンテナ取扱量は、震災前年(10年)から67倍増と驚異的な伸びを示している(下図参照)。
リアス式海岸に位置する釜石港は水深7・5メートルという良港だが、クレーンなどの港湾設備が脆弱で、「漁港」としては有名であったが、「商港」として認知されてこなかった。しかし、震災直後におよそ1カ月で港湾機能を復旧させたことで、そのポテンシャルの高さに注目が集まった。
震災から4カ月後の11年7月には釜石港と国際コンテナのハブ港である京浜港とを結ぶ定期航路が開設された。17年には待望のガントリークレーンを大阪府から無償で譲り受け、同年11月から中国、韓国を結ぶ外貿コンテナ定期航路も開かれた。同港の利用企業数は8社(11年)から75社(18年)へと年々増加している。「定期航路の開設にともない、倉庫や物流など企業の進出が増えている」(釜石市総合政策課)という。