明治を代表する洋画家、高橋由一(ゆいち)といえば、真っ先に浮かぶのが吊るされた新巻鮭を描いた絵であろう。切手の図案にもなった同作品をはじめ、由一の画業をたどる本格的な回顧展が開催される。
高橋由一「花魁」 国重文 明治5(1872)年
東京藝術大学所蔵
東京藝術大学所蔵
高橋由一が生まれたのは文政11(1828)年のこと。伝統的な日本画を手掛けるなか、偶然目にした西洋画法に魅せられた由一は、当時まだ知られていなかった油絵技術の習得に奔走する。そんな中で生まれたのが、細部を妥協なく描く、写実的表現力を尽くした迫真の作品の数々だ。
展覧会では、いずれも重要文化財に指定されている「鮭」や「花魁(おいらん)」をはじめ、「丁髷(ちょんまげ)姿の自画像」「芝浦夕陽」など、由一が得意とした静物画から肖像画、風景画まで全ジャンルを網羅。昨年新たに発見された、旧家に伝わる肖像画も公開されるなど、“近代洋画の父”と称される由一の魅力を、余すところなく知る絶好の機会となる。
明治維新を経て文明開化へ、まさに激動の時代を生きた江戸生まれの画家、由一。往時の空気が伝わってくる作風に触れてみたい。
近代洋画の開拓者 高橋由一
<開催日>2012年4月28日~6月24日
<会場>東京都台東区・東京藝術大学大学美術館(山手線上野駅下車)
<問>03(5777)8600
http://yuichi2012.jp/
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