世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年1月28日

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 オマーンのカブース国王が1月10日に逝去、翌11日ハイサム新国王が即位した。カブース国王の下でのオマーンは安定を保ち、その穏健で独立した全方位外交(イランとも緊密)は「尊敬」され、米、英などとの関係は緊密だった。これには、英サンドハースト士官学校での教育や英の支援を受けた70年の宮廷クーデター等の経験が大きく影響しているのだろう。石油生産国となり経済発展も遂げた。アラブの春運動がオマーンにも波及した時、カブースは雇用の最重要性を強調、公的部門による若者の雇用増大等の措置を取り、これを乗り切った。イラン核合意でも大きな役割を果たした。2013年に米国とイランはオマーンの海辺の家で秘密に会談、2015年の核合意になる基本事項を作成したという経緯がある。

naruedom/iStock / Getty Images Plus

 心配されたのは王位継承だった。カブースの遺書を受けて王族会議が決定、従弟のハイサム文化相(65)が11日即位、継承問題を乗り切ったように見える。カブースには子供がおらず、存命中後継者の指名はしなかった。過去には部族間の抗争や左翼勢力の活動もあり王位継承は機微な問題であった。96年、カブースは国家基本法(憲法)を制定、国王継承につきサイド王族の男子の中から王族会議が選ぶこととし、手続き規則を定めた(湾岸諸国にみられる自動的な世襲を排除する意図もあったのだろう)。カブースは自分が指名する後継候補者の名前を書いた書簡をマスカットの王宮に残すとともに、同じ書簡を南部のサラーラの王宮にも残したと言われる。これまで巷間ではハイサムを含む三人の従弟が有力候補と言われてきたが、ハイサムは最有力候補ではなかった(最有力候補はアスアドといわれた)。そのためハイサム指名に驚く向きもあるという。

 ハイサム国王については経済活動の経験などを好意的に捉える見方もあるようだが、他方で経験不足やカリスマ的指導力の欠如を心配する見方もある。ハイサム国王がどのような指導力を発揮するか、王位継承が国内で旨く落着するかなど注意深く見ていく必要がある。湾岸諸国で若手指導者への世代交代が大きく進む中、ハイサム国王がオマーンの若手指導者をどう使っていくのかも注目される。原油価格下落に伴う財政危機や人口増加に伴う雇用問題、デリケートな外交など新国王の課題は多い。

 オマーンの地政学的重要性は今後一層高くなるだろう。同国はホルムズ海峡とインド洋を擁する戦略的位置にある。今注目されているのがマスカットの600キロ南方で進行中のドゥクム港等経済特区建設である。第二のドバイになるとして、一帯一路を推進する中国は投資を決めている。ここ数年、米国は原子力空母などを寄港させている。英国の艦船も同様である。EU離脱後の英国はオマーンとの関係を重視するだろう。ジョンソン首相は早速弔問に訪れている。この開発計画には日本も大きな関心を寄せている。2018年には日本の海上自衛隊がドゥクム港に寄港し、オマーン海軍との親善訓練を実施した。日本はオマーンとの間で友好関係を強化してきた。米英とも協力して両国関係を一層強化していくべきである。

 

  
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