大統領選での再選への影響を懸念
アトランティック誌(同日付電子版)は「最悪の結末The Worst Outcome」と題するベテラン記者デービッド・フラム氏の次のような批判コラムを掲載した:
「そもそも、大統領がだれであれ、パンデミックのようなケースでやれることにはいくつもの制約がある。そうした中でもトランプ大統領の場合は、あらゆる意味で、起こりうる最悪の結果をもたらした。公衆衛生上のワースト、米国経済面でのワースト、そして米国のグローバル・リーダーシップ面のワーストだ。
とくに大統領執務室からのスピーチは、悪の連鎖の中の最悪だった。肝心の大統領行動が欠落した項目として①国内感染防止策のポリシーおよびガイダンス②ウイルス検査体制の不備と改善に対する十分な説明③今後ウイルス感染拡大、旅行制限、外出規制がもたらす勤労者のレイオフ、失業対策④感染テスト実施、入院治療費用についての保険適用――などがある」
「欧州からの入国禁止措置もドタバタで打ち出したが、中国がイタリアへの医療援助に乗り出した時に、大統領は欧州同盟諸国との関係を遮断しようとしている。今回の危機は、トランプが発生の原因ではないが、必要かつ迅速な対応を怠ったために、事態を悪化させたことは間違いない」
一方、トランプ大統領が意図的に、コロナウイルス感染危機の重大性を過小評価してきた理由について、11月大統領選での再選への影響を懸念したからだとする見方も出ている。
ニューヨーカー誌(3月9日付電子版)は、大統領が患者発生数、事態の深刻さにふたをするような発言をくりかえしていることについて、米国内の多くの医師、公衆衛生専門家たちが落胆している」とした上で、ハーバード大学公衆衛生大学院のマイケル・ミナ博士の以下のような発言を紹介している:
「私たちに今必要なのは、自分の大統領選での再選より先に、国民の安寧を優先させる指導者だ。そのためには、今回の危機について正確な情報を開示し、よりオープンなディスカッションを通じ、自分たちが次に何をすべきかを国民に理解させることだ。トランプの再選への個人的関心は、明らかに真実と国民の最善の利益と衝突する」
コロナウイルス感染危機と大統領選挙――今後、果たしてコトはトランプ氏の思惑通りに運んでいくのかどうか。
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