10日実施された米民主党候補選びの6州予備選・党員集会のうち、最大州ミシガンのほか、ミズーリ、ミシシッピー、アイダホ各州でもジョー・バイデン候補(77)が勝利した結果、同党有権者のバーニー・サンダース候補(78)からの離反が一層鮮明となった。党内有力者の間では早くもサンダース候補に対する「早期撤退」を示唆する発言も出始めた。
とくに代議員147人を擁する中西部の重要州ミシガンは、バイデン候補に大敗を喫した3日の“スーパー・チューズデー”以来、サンダース氏にとっては巻き返しを図る死活的な「ファイア・ウォール」(防火壁)と位置付けられてきた。しかし、結果は、予想以上の差でバイデン氏に軍配が上がった。
その背景として、サンダースのこれまでの過激な「民主党体制攻撃」に対する、幅広い有権者の“疲労感”が指摘されている。
テリー・ブランシャード元ミシガン州知事は地元紙とのインタビューで次のようにコメントしている:
「有権者はこれまでの各州予備選を通じ、サンダース氏が“歯向かう候補 protest candidate”であることをよく理解してきた。しかし今は、同じ党のライバルに刃を向け続けるのではなく、11月本選でトランプを打ち破るための指名候補を決める段階に来た。彼が4年前にクリントン候補と最後まで戦った時のダイナミズムは今や存在しなくなっている。“革命の嵐”は去った」
また、同州デトロイト都市圏にあるセントクレア郡の民主党支部長を務めるジム・フランク氏も「わが郡党員の中には4年前は、サンダース支持者がかなり存在したが、今や彼の『体制攻撃』レトリックに疲労感を感じている。自分自身、かつて進歩派だったし、今もそうだが、同時に民主党員だ。わが党の組織というものは、党員であることで成り立っており、造反するだけでは党が瓦解する」と危機感をあらわにした。
実際、サンダース氏はミシガン州予備選の直前まで「クロブシャー、ブティジェッジ両候補は『エスタブリッシュメントのプレッシャ―』で撤退を余儀なくされた。2016年ミシガン予備選でも、自分は負け犬とされたが、投票日には、体制を代表するヒラリー・クリントンに打ち勝った……かりに、ミシガンで今回負けても、ドロップアウトしない」と徹底した体制批判に終始した(3月8日、Fox TVインタビュー)
しかし、10日の予備選の結果、民主党員のサンダース離れが急速に進んでいることが明白になった。とくにミシガン州予備選での投票者動向出口調査では、次のような新たな特徴が指摘されている:(同日付ウォールストリート・ジャーナル紙)
- 同州投票者総数に占める45歳以上のシェアは4年前は55%だったが、今回の予備選では64%にまで増加した
- バイデン候補は45歳以上の投票者総数の3分の2を占めた
- 今年の特徴として高齢者層の全体に占めるシェアがとくに拡大した
- 「リベラル志向」「若年層」投票者のシェアは低下した
- 「穏健・中道」「保守派」を自認する投票者のシェアが拡大した
つまり、今回のミシガン予備選では、4年前、サンダース氏がクリントン候補に競り勝った当時と比較して、より多くの中高年層、穏健および保守層有権者が投票した結果、バイデン勝利につながったことになる。
さらに、公共放送NPRが同日伝えた出口調査によると、ミシガン予備選では、女性支持層の間でも、バイデン氏(57%)が、サンダース氏(39%)を大きくリードしたことが判明した。黒人層では各州においてすでにバイデン氏優勢が歴然としており、サンダース支持基盤はいよいよ、リベラルな若年層に限定されつつある。
こうした結果を踏まえ、次はいずれも多数の代議員を持つアリゾナ(67人)、フロリダ(219人)、イリノイ(155人)、オハイオ(136人)主要4州で行われる17日の予備選に移る。しかし、2016年選挙ではサンダース氏はクリントン氏に4州すべてで敗退しているだけでなく、前回に比べ今回は同氏にとって形勢は一段と厳しいものになりつつある。
またこれら4州を合わせた代議員総数は、“スーパーチューズデー”各州総数より200人以上も上回っており、もし、ここでもサンダース氏が辛酸をなめる結果になった場合は、もはや同氏にとっては「万事休す」状況を迎える。