米大統領選民主党候補者争いで急進左派バーニー・サンダース氏(78)への支持が拡大するにつれて、同党主流派の間では、11月大統領本選でトランプ再選のみか、議会選挙でも、上院で多数を占める共和党に下院奪回も許すのではないかとの不安が広がり始めている。
サンダース候補は民主党候補レースの初戦アイオワ州党員集会でピート・ブティジェッジ氏(38)とほぼ横並びで首位に立ち、第2戦のニューハンプシャー予備選ではトップに躍り出た。その後22日行われる第3戦ネバダ州党員集会でも優位な戦いを進めており、いよいよ「フロントランナー」としての地位が鮮明になりつつある。
しかし、かねてからその急進的主張ゆえに異端視され、立候補前までは「無所属」の立場をとってきた同氏だけに、党内主流派からは、警戒と懸念の声が上がり始めている。このままの勢いを保ち多勢の各州代議員とともに7月党大会になだれ込むことになれば、大会そのものが大混乱を引き起こすのみならず、11月大統領選での大敗につながりかねないという不安だ。
こうした心配の声は、アイオワ党員集会開催前の、年明け早々から民主党幹部の間でささやかれてきた。
公共放送PBSは去る1月8日のニュース番組で、オバマ前大統領の選挙参謀を務めたレーム・エマヌエル前シカゴ市長の以下のような批判コメントを伝えた:
「サンダース候補は『民主社会主義者』を自認し、国民皆保険への揺るぎなき支持を表明しているが、こうした立場では2020年大統領選のカギを握る不確定のスイング州swing statesの賛同を得られない。最後の“戦場”となるこれらの州の票を勝ち取るためのメッセージを持った候補が必要だが、サンダース民主党候補ではますますそれが困難になる」
同様の懸念は、オバマ政権で活躍した多くのベテラン政治家のほか、バイデン、ブティジェッジ両候補など中道穏健派からも出始めていた。
2016年大統領選でヒラリー・クリントン陣営を支えたスタッフたちの間では「彼が最後まで党内統一をかき乱し、民主党のイメージを傷つけたことが、トランプを当選させる結果につながった」との“恨み節”までささやかれてきた。
しかし、その後、予備選や党員集会を通じ、サンダース氏の優勢が伝えられるにつれて、より深刻な懸念へと変わってきた。
主要メディアも懸念示す
2月12日付ニューヨーク・タイムズ紙は、「サンダース候補指名がもたらす下院選敗退を穏健民主党議員が懸念」と題する以下のような記事を掲載した:
「明らかに左傾化路線を歩むサンダースが指名レースの先頭を走り始めるにつれて、中道的立場の議員たちの間から、このままではホワイトハウス奪回のチャンスを逃すのみか、下院多数保持もできなくなるとの不安が増大しつつある。とくに、前回2018年中間選挙で共和党議員を打ち破り初当選した1期生議員たち十数人は、11月選挙で手ごわい共和党候補から“社会主義政党”のレッテルを貼られ苦戦を強いられているだけに、サンダース候補の主張を支持にくい立場にある」
「上院選でも、民主党はこれまで、4議席上積すれば多数体制を奪回できるとして、勝算が高いとされるノースカロライナ、アリゾナ、コロラド、メーンの4州での選挙戦に力点を置いてきた。しかし、その後サンダース候補の存在が目立ち始めるにつれて、情勢は厳しくなりつつある。共和党から『民主党はサンダーズ党』と攻撃されることで、民主党候補による反撃を難しくさせている」
ワシントン・ポスト紙も翌13日、著名コラムニストによる「我々は国家的危機に立たされた今、バーニー・サンダースというリスクを背負う余裕はない」との見出しで始まるサンダース批判記事を載せ「ウクライナ疑惑を乗り切ったトランプ政権が独裁色を強めつつある今、再選を阻むチャンス到来の時期に社会主義候補に身をゆだねるほど馬鹿げたことはない。もし11月に民主党候補が勝てなければ、わが国デモクラシーが危殆に瀕することになる。まさにSOS信号発信の時期だ。民主党はなんとしてもサンダース指名だけは避けるべきだ」と警告した。