主要産業が影響を受ける欧州
外出を控え在宅勤務をする人が増えたことから、ドイツでもビデオ会議設備を提供する企業などは恩恵を受けているが、ルフトハンザ航空を筆頭に多くの企業が売り上げ減少に直面している。航空機、自動車用シートを製造している企業は、中国での自動車製造減少に加え航空業界の低迷により大きな打撃を受けていると報道されているが、欧州の自動車メーカがコロナ対策の影響から生産中止を余儀なくされ、さらに打撃は大きくなりそうだ。
スイス・ザンクトガレン大学の研究者によると、今年の世界の自動車生産は7690万台、2019年比270万台減、米中貿易戦争前の2017年のピークから750万台減と予想されている。中国での販売低迷が続き今年の台数は1930万台だが、販売は今年底を打ち2025年に2017年のピーク時台数に戻るとの予想だ。前提はコロナウィルスが数カ月で収束することだが、現状ではドイツを中心に欧州の自動車メーカは欧州市場の販売不振に直面しそうだ。
フォーチュン誌(電子版)は、この研究者の発言として「欧州の自動車メーカは失われた10年に直面する」を伝えている。2019年の乗用車の販売レベルに欧州市場が回復するのは2030年になるという。コロナの影響により、既にフォルクスワーゲンはスペイン、ポルトガルなどの工場を17日に停止し、20日からドイツの工場を停止している。ルノーはフランスの全12工場を16日に停止し、フィアットクライスラーからフェラーリまで多くのメーカが先週から一時操業を停止している。この操業停止による生産の落ち込みは数カ月で回復することができても、需要の回復は簡単ではないとの見通しだ。
コロナウィルスにより、中国に供給を依存しているリスクも明らかになり、欧州では供給分散の必要性も指摘されている。特に、今後電気自動車に移行する場合電池を中国に依存することのリスク浮かび上がったとの見方もあり、欧州ではエアバス方式での各国が分担した電池製造に力が入ることになりそうだ。ただ、供給分散を実行する前に、コロナ問題が終息しなければならないのは言うまでもない。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。