2024年4月30日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年6月25日

 しかし、自民党が子ども手当に反対したのは、これで選挙に負けたと思っている議員が多かったかららしい。自民党の最大派閥は、落選した議員である。09年の8月30日まで300議席持っていた自民党が119議席になってしまったのだから、当然である。多くの落選議員は地方の自民党の支部長として力を持っている。彼らの意を酌めば、自民党の執行部としては、執拗に反対するしかない。

 尖閣諸島での中国漁船衝突事件、東日本大震災や原発事故対策はお粗末にすぎるが、私は、大震災対策以外では、自民党政権ならずっと良い対策が取れたという気がしない。復興し、アヘン戦争以来の恥辱を晴らしたいと考えている大国に対して、衰退する日本がどう対峙していくかは、簡単な問題ではない。

 また、あるシンポジウムで、自民党の要人が、自民党なら原発事故対策をもっとうまくできたかと聞かれたことがあった。この要人は、できたとは答えなかった。そう答えれば、そもそも原発安全神話を作り、危機対策を考えてもいなかったのになんだと攻撃されるからだろう。原発の水素爆発は事故後、ほぼ1日で起きている。このような事故対策は、事前に決めておくべきことで、事故が起きてから、政治家が専門家の意見を聞いて決断したのでは間に合わない。その時の政治家にできることは限られているのだ。 

消費税増税は集票が目的?

 すると、民主党政権の最大の失策は、マニフェストにもなかった消費税増税を主張したことではなかったろうか。多くの人が、消費税増税は、高齢化する日本の将来のために、また、巨額の財政赤字を埋めるために必要なことだと考えているようだが、現在行われようとしている消費税増税は、まったくそのようなものではない。

 消費税を少し上げれば、現役世代が1対1で高齢世代の年金や医療費を負担する肩車社会を維持できるというようなものではないからだ。本誌3月号の「年金議論を避けるな」でも書いたように、穏当な、例えば20%の消費税で高齢化社会を乗り切るためには、高齢者のための社会保障を相当程度削らなければならない。このことを議論しないで、少し消費税を上げれば現行の福祉水準が維持できるかのように国民に思わせるのは大きな間違いである。

 高齢者のための歳出を増やして、それを消費税増税で少し埋めても、高齢者は増えていくのだから、まったく財政再建の助けにならない。それどころか、民主党は、消費税を実際に上げる前からコンクリートにも人にもの歳出拡大をしてしまっている。


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