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日本の財政がとんでもない赤字であることは誰でも知っているが、なぜそうなったのだろうか。実は、日本の財政赤字は小泉政権(2001年4月~06年9月)末期と安倍内閣(06年9月~07年9月)の時代、06年度、07年度には改善していた。図に見るように、政府債務残高の対GDP比は横這いになっていた。
ところが、08年度以降、債務は急増し、財政再建の道筋は見えなくなった。だから消費税を増税するという話になっているのだが、現在の増税案は、増税して現在の高齢者にお金を配ってしまう案で、将来の高齢者、すなわち、現在の若者世代のためにお金を確保しておく案ではない。それよりもまず、なぜ財政再建に成功していたにもかかわらず、その後、失敗してしまったのかを考える必要がある。
財政再建を阻んだ自民党の焦土作戦
成功したのは、公共事業を削り、地方に渡すお金も減らし、それ以外の支出も増えないようにしたからだ。福祉支出は高齢化とともにどうしても増えてしまうのだが、それもあまり増えないようにしていた。政府支出の伸びを抑えているなかで、経済が好転していった。景気が回復する過程では、税収は名目GDPの伸びの数倍も伸びる。そこで財政再建に成功した訳である。
その後、リーマンショックに始まる08年以降の世界不況で、財政は再び大赤字となってしまった。赤字の理由は、第1には、不況で税収が減ったことである。第2には、自民党末期の麻生政権が、景気対策として空前の財政の大盤振る舞いをしたことである。
07年度の一般会計税収は51兆円、歳出は81.8兆円だった。08年度には税収が44.3兆円に減少し、歳出は84.7兆円になった。09年度には税収が38・7兆円にまで減少し、歳出は101兆円に膨らんだ(財務省「日本の財政関係資料」11年9月)。
自民党の最後の麻生太郎内閣は08年9月から09年9月まで続いたから、09年度の予算は麻生内閣がほぼ決めたものである。07年度を平常ベースと考えてこれと比べると、税収減は12.3兆円、歳出増は19.2兆円である。
不況で税収が減るのは仕方がないが、歳出増の19.2兆円はやりすぎだったのではないか。中身を見てみると、社会保障関係費が7.5兆円、公共事業関係費が1.1兆円、その他が11.5兆円である(合計が19.2兆円にならないのは、その他に債務償還費が入っていないからである)。
その他11.5兆円の中身は、地方交付税等の増額、住宅・エコカー減税・家電エコポイント、中小企業支援、雇用調整助成金の増額などである。さらに、08年度のことだが、すべての日本居住者に1人1.2万円(65歳以上、18歳以下には2万円)を配る定額給付金に2兆円を使っている。財政の大盤振る舞いによってどれだけ景気刺激効果があったかは明らかではない。日本のGDPの回復は、世界金融危機の震源地のアメリカよりも遅い。しかし、これは政治的には大きな意味があった。