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2020年5月12日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『THE NIKKEI WEEKLY』の記者を経て独立。著書に、『松下政経塾とは何か』『長寿大国の虚構―外国人介護士の現場を追う―』(共に新潮社)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)。近著に『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)など。

夕刊を廃止すればよいのではないか?

 しかし新聞社には、違法就労問題を解決する術がある。夕刊を廃止すればよいのだ。夕刊配達がなくなれば、留学生の勤務時間は減り、違法就労状態が解消するばかりか、販売所の人手不足も改善する。だが、夕刊は廃止されない。そして現在まで、留学生たちは違法就労と残業代の未払いを強いられ続けている。

 筆者が『朝日』をやり玉に挙げるのは、他にも理由がある。ベトナムで日本への「出稼ぎブーム」が起きたのは、『朝日』の影響もあってのことなのだ。

 「日本に留学すれば、働いて稼げる」というモデルは、『朝日』の新聞奨学生制度もきっかけとなってベトナムで広まり、他のアジア新興国へも波及していった。結果、出稼ぎ目的で、多額の借金を背負って日本へ渡る若者が急増した。その意味で『朝日』には、“偽装留学生”問題に対する責任があると筆者は考える。

 しかし現実には、『朝日』を始めとする大手紙は、“偽装留学生”の存在に知らんぷりを決め込んでいる。冒頭で紹介した記事も、アジア新興国出身の留学生の大半が借金漬けでの来日を強いられている事実には、全く触れていない。彼らはメディアが揃って頻繁に取り上げる実習生よりも、ずっとひどい生活を日本で味わっているというのにだ。

 知らんぷりの理由は明白だ。多くの留学生が「週28時間以内」という法定上限を超える就労を強いられている実態を報じれば、新聞の配達現場で横行する違法就労問題に火の粉が及ぶ。そのことを恐れているからである。

 コロナ禍によって、今春に限って留学生の入国は激減した。だが、ひとたび終息すれば、“偽装留学生”の流入も再び加速しかねない。留学生として学費を支払ってくれ、底辺労働者として利用できる彼らの存在は、日本にとって極めて都合がよいからだ。

 <ポテチも買えない>困窮留学生は誰が生み出したのか。それは何も「コロナ」だけのせいではない。大手メディアが政府と一体となって、“偽装留学生”問題に蓋をしてきた結果なのである。

  
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