Wedge REPORT

2020年6月15日

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(taa22/gettyimages)

 一歩間違えば、明日は我が身かもしれない。アンジャッシュ・渡部建氏が複数女性との不倫発覚により、芸能活動を無期限自粛することになった一件についてである。

 渡部氏はモデルや女優として名の知れた美人妻と結婚し、1歳の愛息もいながら陰で数々の不倫が明らかになり、衝撃は発覚から数日が経過した今も沈静化していない。多くのレギュラー番組を抱えるなど年収1億円以上の超売れっ子タレントとして、グルメや高校野球好きの爽やかな顔と好感度の高さをウリにしていたはずが、そのギャップに世間の多くは大きな衝撃を受け、当人も猛烈なバッシングを受けている。

 さすがに、こればかりは批判を向けられて然るべき蛮行だろう。信頼していた人やビジネス上の関係先に計り知れないダメージを与え、そして何よりも愛妻と幼少の息子を裏切ったことは現時点においては法律上の責任はないにしても事実上の〝重罪〟に値するに等しい。

 さて、ここから先が冒頭の文で触れたことだ。この渡部氏が犯した複数女性との不倫を見聞きし、実はプロスポーツ界の関係者たちも「明日は我が身」として反面教師にすべきと気を引き締め直している。渡部氏と関係があるとか、そういう類の話ではない。

 世間の注目を集め、一獲千金のチャンスが舞い込んで常態化し、黙っていても多くの女性が寄ってくるプロスポーツ界のスター選手は渡部氏の境遇とほぼ共通している。その手のスター選手たちを数多く抱えるプロスポーツ界の中には「道徳的観念のズレによって〝第2の渡部〟を生み出してはいけない」という危機感が今、あらためて強まっている。

 特に警戒心を強めているのは、日本のプロスポーツ界の中で選手の平均年俸が断トツで高いプロ野球界だ。高卒からプロ入りし、ルーキーイヤーから活躍すれば翌年から数千万円単位の年俸を手に出来るケースも当たり前のようにある。見たこともない莫大なサラリーを手にして金銭感覚が狂った挙句に周りからチヤホヤされ、容姿端麗な美女たちも擦り寄ってくるとなると、それなりに芯の強さがない男は甘い誘惑に負けやすい。この世界で結婚して生涯の伴侶を得ているにもかかわらず、コッソリとハメを外しているなんてことはハッキリ言えばザラにある。

 それなりに歴を踏んで名の知れた選手になったら尚のことだ。年俸が増えて湯水のように使えるカネとスターダムにのし上がった地位を目当てに美人局のような悪い輩が接近してくることも少なくはない。ここで制御しなければならないはずの煩悩が負けてしまうと、そこには取り返しのつかない落とし穴も待ち受けている。

 これまで球界の長い歴史において表に出ない醜聞は幾度となく発生しており、その当事者の中には誰もが知るスーパースターの名前もある。ひと昔前の話ではあるが、それらは有力な関係者たちによるモミ消し工作によって闇に葬られた。

 しかし近年はプロ野球を統括するNPB(日本野球機構)が各球団のルーキーを対象に新人選手研修会の実施を徹底させ、プロ選手としての自覚と社会常識や道徳観念の植え付けを重視している。各球団でも、新人教育の場の設定は今や必修行事だ。それでもコロナ禍のつい最近ですら某人気球団であったようにハメを外してしまう選手は少なからずいるが、さすがにひと昔に比べれば幸いにして随分と鳴りを潜めた感が強い。とはいえ、プロ野球界が渡部氏の一件でより神経を尖らせ始めたのは、やはり昨今の新型コロナウイルス感染拡大によって社会事情が一変してしまったことにも大きく関係している。

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