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2020年6月25日

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上林功 (うえばやし・いさお)

追手門学院大学准教授

1978年11月生まれ、兵庫県神戸市出身。追手門学院大学社会学部スポーツ文化コース 准教授、株式会社スポーツファシリティ研究所 代表。建築家の仙田満に師事し、主にスポーツ施設の設計・監理を担当。主な担当作品として「兵庫県立尼崎スポーツの森水泳場」「広島市民球場(Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島)」など。2014年に株式会社スポーツファシリティ研究所設立。主な実績として西武プリンスドーム(当時)観客席改修計画基本構想(2016)、横浜DeNAベイスターズファーム施設基本構想(2017)、ZOZOマリンスタジアム観客席改修計画基本設計など。「スポーツ消費者行動とスタジアム観客席の構造」など実践に活用できる研究と建築設計の両輪によるアプローチをおこなう。

無観客で始まったプロ野球(AP/アフロ)

 念願のプロ野球開幕である。新型コロナ感染症の拡大に伴い、延期していたプロ野球がセ・パともに6月19日に開幕となった。スポーツビジネスに関わる者としてまずは関係者の皆さんの御尽力に深く感謝の意を表したい。

 開幕とはいうものの、当面の間は無観客試合として、スポーツファンは地上波放送やBS、スマホアプリを通じた配信視聴での観戦を余儀なくされている。直接観戦を望む気持ちはウソではないが、まずは慣れ親しんだ生中継が始まることが純粋にうれしい。往年のファンの中にも、実はスタジアム行ったことがなく、根っからのテレビ派も少なくないのではないか。1990年代と比べて少なくなった生中継が、再び注目されている事に不謹慎ながらワクワクしてる自分がいる事も確かなのである。

 ここで改めて生中継によるスポーツ配信に注目していきたい。なぜなら、かつてのナイター中継から時代は移り変わり、楽しみ方も現代的に進化しているからである。かたや実況中継と選手OBの解説、副音声なんかも楽しみながら・・・なんていう中継とはまた違った工夫が凝らされていて面白い。そして、こうした工夫がコロナ後のスポーツ観戦の行く末があるのではないか。

 ではまずは巨人から。読売ジャイアンツは開幕に併せ、複数の企画を打ち出している。ファンが歌った応援歌を募集して、スタジアムで同時合唱として鳴らしたり、アバターロボットを使って選手に直接インタビューするなど内容も豊富となっている。

 ジャイアンツの企画の中でも注目したいのは、配信アプリを利用した「バーチャルビューチケット」。スマホアプリを通じて、WEB上のバーチャル観戦エリアに自分の分身となるキャラクターを置く参加型ライブ配信で、東京ドームの複数カメラ映像を見ながらコメント機能を使って視聴者同士で会話したり、自身のキャラクターを通じてタオルを振るなど疑似的な応援アクションもできる。今回は開幕記念ということで、抽選による無料での視聴パス配布としているが、今後一般的な観戦チケットとともにバーチャル観戦席として売り出すといった可能性も秘めている。

 スポーツ観戦をしていて常々思うのが、スタジアムの醍醐味はファン同士の場の共有。私はシャイな性格なのでスタジアムで隣り合った初対面の人と肩を組んで、といったことはとてもじゃないけど出来ないが、むしろスポーツを通じて仲良く応援している人達を見ると何とも、ああスポーツって良いなと思ってしまう。

 リモート観戦でキーとなるのはまさにこの「共有」で、かつてのテレビ放送ではスタジアムでの大声援を聞き、自分もスタジアムに立ったつもりで脳内でスタジアムの雰囲気を「共有」したものだが、無観客でのスタジアムにはその盛り上がりが無いので、メディアを通じた観戦そのものに盛り上がりを「共有」できる仕組みを付加しなければならない。

 お茶の間で盛り上がっていた興奮を、どうやってファン同士で共有するか。ジャイアンツの「バーチャルビューチケット」はWEB内の仮想空間で視聴者同士をつなげ、興奮を共有する取り組みと考えると納得である。現在は1試合2020人分を12試合、計2万4240人分を抽選で配布予定だ。

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