フィンテック企業の参入により
生まれる付加価値とは
それでは全銀システムのようなプラットフォームは二面性市場としての特徴を持っているのであろうか。まず全銀システムでは、銀行が金融サービスの売り手、顧客が買い手となるが、売り手は銀行に限定されている。今後、フィンテック企業のような銀行以外の決済サービス事業者に対し、全銀システムへの参入が認められるようになれば、利用者にとってのサービスの選択肢が広がるだけでなく、従来の金融サービスとの連携を進めることを通じて顧客の利便性が一段と向上することが期待される。その結果、全銀システムのプラットフォームとしての価値が高まる。
次に、全銀システムを運営する「全国銀行資金決済ネットワーク」(全銀ネット)が取引仲介者として、取引の円滑化や市場規律の定着といった機能を果たしている点が挙げられる。金融庁・日本銀行が全銀ネットに対するチェック機能を果たしていることとも相まって、全銀システムのルールがしっかりと遵守される体制が続いていることがその信用を支えている。今後、新たなプレーヤーが参入する場合にも全銀システムの信用をしっかりと維持していくことがプラットフォームの価値を高めることにつながる。
もっとも、多様なプレーヤーの参入を認めれば二面性市場の特徴が満たされネットワーク効果がフルに発揮されるかと言うと話はそう単純ではない。金融サービスの利用者は、スマートフォンバンキング等のアプリを使って自らの預金口座から取引を起動するために全銀システムにアクセスするのが一般的であり、むしろ、全銀システムを使っていること自体も知らない利用者が多い。
そうしたサービスを利用するにあたり、どの事業体がどのようなインターフェースを通じてどういったサービスを提供しているのかといった情報を網羅的に検索することもできない。マルシェに行けばどういう店があるかを一目で見ることができるのとは異なり、全銀システムの市場構造は、やや分かりにくい。
このため全銀システムのプラットフォームとしての価値を利用者が認識できるようにするには、
- 全銀システムにはどのような金融機関や事業者が参加しているか
- これらの金融機関等を通じてどのようなサービスを受けられるか
- サービスの対価として支払う手数料はどうなっているのか
を把握できるような透明性の高い枠組みを検討する必要があろう。