日本が抱える口座移管の壁
サービスを自由に選べる環境整備を
同時に、利用者がサービス提供者を自由に選択できる(すなわち、不自由なく預金口座を他の金融機関等に移管できる)仕組みも必要になろう。イギリスで2013年に始まった「カレント・アカウント・スイッチ」では、預金口座の残高や公共料金の定期的な引き落とし等を含め、利用者は全ての取引を新設した預金口座に容易に移管することができる。口座移管の際に利用者が負担するコストはゼロと言われる。
日本人一人当たりが保有する預金口座数は7を超えるが、イギリスのように口座移管を手軽にできるようになれば、利用者はこれらの口座に根雪のように残る資金の一部をフィンテック企業のサービスやデジタル・ウォレットに振り向けられるようになるかもしれない。全銀システムへの新しい事業者の参入を認めるにあたっては、利用者が銀行やこうした事業者によって提供されるサービスを比較しながら自由に選べるような環境を整備していくことが重要である。
マルシェと全銀システムは、一見すると何の関係もないようだが、両者とも社会経済取引の根幹を支えるプラットフォームとしての役割を果たしている。折しもコロナ禍によって閉鎖されていたマルシェが徐々に再開されている。この間、全銀システムではコロナ禍の下で増加した資金取引を円滑に処理すると共に、次世代資金決済システムの構築に向けた議論を年初から積極的に行っている。マルシェにしろ、全銀システムにしろ、これらの市場が市民生活の向上に向けて、より一層重要な機能を発揮してもらうようになることを期待したい。
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