企業や集合住宅オーナーがチャージステーション設置で
利益を上げられるシステム
一方で、こうしたチャージステーションの劇的な増加を見込み、企業や集合住宅オーナーがチャージステーション設置により利益を上げられるシステムを販売する企業も登場した。ロサンゼルスで2019年に創業されたばかりのスタートアップ、Xeal社だ。
Xeal社は自社で安価でシンプルな壁掛け式のEVチャージステーションを製造販売しているが、それよりも注力しているのがアプリだ。このアプリはオーナー、ユーザー双方に向けられたもので、ユーザー側は付近にあるチャージステーションの予約、アプリ課金での支払いなどを行うことが出来る。集合住宅の住民、企業の従業員でなくとも、自由に空いているチャージステーションを開放することにより収入を得る、という考え方だ。
オーナー向けにはAIを使い、最も安価な電力を選択して供給、利用状況や月ごとの収入などがわかりやすい形で示される。同社のウェブサイトにはカリキュレーションが用意されており、例えば駐車スペースのうち5台分をEVチャージ用とし、1時間のチャージ料金を2ドル25セントに設定、1週間に30時間の利用があった場合、年間の見込み収入額は1万7550ドル、20トンの地球温暖化効果ガスの節約になる、など細かい説明が行われている。
またXealのシステムは、Xeal社のチャージャーでなくとも利用することができる。つまり、SCEのプログラムに応じて新たにチャージャーを設置した場合、同社のシステムを採用することで簡単に運営することが可能となるのだ。
このチャージ・シェア・ビジネスは今後大きく発展する可能性がある。アパートの住民や特定企業の従業員しか使用しない、となるとチャージステーションの設置のハードルは高いが、一般に公開することで収入が得られる、となると興味を示す人が増えると考えられるためだ。さらには個人の住宅でも使っていない時間帯にチャージャーを貸し出す、ということも可能となる。
もちろんガレージスペースへのアクセス、といった問題はあるが、IoTの発達によりコード入力でガレージドアを開放することが可能となっている。すでにコネクテッド・カーの分野ではパッケージデリバリーがキー解除により車のトランクに行われる、あるいは洗車を頼めば車がある場所まで来てくれて内部も掃除してくれる、といったサービスが存在する。アプリ内に1回限りの解除コードを割り振ることで、ロックされたガレージ内に入ることができる。
チャージステーション設置の初期費用と使用電力料金を差し引いた実際の収入額が納得できるものであれば、こうしたサービスは今後広がりを見せるだろう。それがチャージステーションの普及にもつながり、EV社会の導入が本格化する。
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