2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2020年9月28日

前代未聞の大混乱に

 大統領が郵便投票をこうまで恐れるのは、郵便投票では自分が圧倒的に不利になってしまいかねないからだ。前回の郵便投票は全体の投票の25%程度だったが、世論調査によると、今回は54%が利用する見通し。有権者がコロナウイルス感染を恐れているためだ。トランプ支持者の半分以上が選挙当日に投票すると答えたのに対し、バイデン支持の過半数は郵便投票と回答している。

 郵便投票の開票は大幅に遅れる州が予想されているため、トランプ大統領が郵便投票の開票を待たずに11月3日の選挙当夜に勝利を発表。バイデン氏がこれに異を唱え、郵便投票の大勢が判明した後、逆に勝利を宣言する可能性も現実味を帯びている。いずれにしても大統領の“居座り”姿勢が続けば、選挙後に前代未聞の大混乱が起きるのは必至だろう。

 選挙結果を尊重しないような大統領の姿勢には共和党からも深刻な懸念の声が上がっている。上院の指導者マコネル院内総務は声明で、米国が培ってきた伝統通り、選挙の勝者が来年1月20日に大統領として就任し、秩序だった政権交代が行われると発表し、トランプ大統領にくぎを刺した。

 米紙によると、上院ナンバー2のスーン議員も、選挙後に大統領がホワイトハウスを去ることを拒否した場合、共和党の議員たちは阻止するために立ち上がるのかと聞かれ、「そうすると信じている」と述べ、共和党が憲法と法の支配を重んじる党であることを強調した。

 対立候補である民主党のバイデン前副大統領は「私たちはどこの国にいるんだ? 言うべき言葉がない」と大統領の“居座り”姿勢を一蹴したが、懸念しているのは明らか。同氏は6月の時点で早くも、「トランプが選挙を盗もうとしている。これが唯一最大の心配事だ」と警戒を露わにしていた。

 大統領はバレット氏指名を発表したローズガーデンでの式典で、同氏のこれまでの業績を称え、上院に速やかに承認するよう要求した。式典には同氏の夫や7人の子供たちも出席し、和やかムードが演出されたが、大統領の胸中はバイデン氏に後れを取る選挙のことでいっぱいだっただろう。次の節目は選挙の行方を決定的に左右する29日のディベート(討論会)だ。

  
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