中東を読み解く

2020年9月15日

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 中東ペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの代表は9月15日、トランプ大統領の仲介の下、ホワイトハウスでイスラエルとの関係正常化に調印する。パレスチナ問題を切り捨てて敵対関係の解消に踏み切った形だ。米、イスラエルとともにイラン包囲網を構築する一方、対立が激化している軍事大国トルコをけん制し、「反トルコ同盟」を強化するのが“裏の狙い”だ。

(Photo_Russia/gettyimages)

エルドアン大統領の軍事介入に反発

 この9日にオンラインで開かれたアラブ外相会議はアラブ世界が直面する最大の脅威が「エルドアン大統領率いるトルコである」ことをあらためて露わにした。外相会議の決議はトルコに対し、「地域の安全保障を脅かしかねない挑発をやめるよう」要求し、トルコによるアラブ諸国への「干渉を監視する小委員会」を設置したことを明らかにした。

 この決議はUAEやサウジアラビアが主導したが、アラブ諸国が懸念しているトルコの干渉とは何なのか。それはエルドアン政権による各地への軍事プレゼンスの拡大である。トルコは現在、隣国のシリアやイラクに軍を侵攻させて拠点を確保している他、北アフリカのリビア、ソマリア、ペルシャ湾のカタール、地中海の北キプロスに軍隊を派遣、駐留させている。こうした動きが「アラブ世界への干渉」として、警戒と反発を呼んでいるわけだ。

 特にサウジアラビアとUAEの反トルコ感情は強い。サウジアラビアは2年前の反体制ジャーナリスト、カショギ氏殺害事件をめぐってトルコと関係が悪化。エルドアン大統領とサウジの実力者ムハンマド皇太子は犬猿状態にある。サウジは隣国の小国カタールいじめを主導し、UAEやバーレーンを引き入れてカタールを経済封鎖した。しかし、トルコはカタールに救済の手を差し伸べ、サウジの圧力に抗することができるよう、軍隊を派遣した。

 UAEもリビアを舞台に事実上、トルコと戦争状態にある。UAEはリビア内戦で、中央政府のシラージュ暫定政権に敵対する反政府勢力「リビア国民軍」(LNA)を軍事支援、首都トリポリに攻勢を掛けてきた。これに対しトルコは今年初めから暫定政権を本格的に支援、軍やシリア人民兵を派遣し、参戦した。UAEとトルコは互いにドローン部隊を投入、激戦となった。一時はLNAが首都に迫ったが、トルコ軍のテコ入れで戦況は逆転、トルコの軍事的勝利が確定的となっている。

 アラブのメディアなどによると、エルドアン大統領がUAEを憎悪しているのは、2016年のトルコのクーデター未遂事件の背後にUAEが介在していた疑惑があるからだ。UAEが事件の首謀者らに資金を提供していたという。エルドアン氏の最大の政敵で、米国に亡命中のギュレン師とUAEが仲介者を通して接触していたとされ、両国の対立の根は深い。

 アラブ外相会議では、パレスチナ自治政府がUAEとイスラエルの国交樹立に反対したが、ほとんど無視され、トルコ問題が焦点となった。トルコ非難決議には、リビア、カタール、ソマリア、ジブチの4カ国が反対したものの、有力国であるUAEやサウジアラビアが強引に押し切った。UAEは中東最強の軍事国家イスラエルとの関係樹立を「反トルコ同盟」の強化に結び付けたい考えだ。

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