米国ではトランプ大統領のコロナウィルス感染とその後の行動によるコロナ軽視の姿勢などが話題となっている。しかしコロナ対策で批判されているのは大統領だけではない。コロナ騒動の中で売り上げを大幅に伸ばし、勝ち組と呼ばれるアマゾンのCEO、ジェフ・ベゾズ氏への批判が大規模な抗議行動につながっている。
大きな理由は、今年3月以降アマゾン従業員のコロナ感染数が2万人に迫っていること。10月6日の時点で感染者は1万9816人。米国ではこのほかタイソンフーズ社が少なくとも1万人の従業員感染を公表している。
同社では主に配送センターでのクラスターが報告され、そのたびにベゾズ氏は対策を約束してきた。しかし従業員らは透明性を要求、何人の従業員が感染したのかの数字を公表するよう求めていたが、アマゾン側はこれに応じず、10月6日に出されたこの数字が公表された初めてのものとなる。また、そのうち何人が死亡したのかについては明らかにされていないが、米メディアによると少なくとも10人がコロナにより死亡した、という。
アマゾン従業員による抗議行動は過去にもあり、3月にはニューヨークステッタン島の倉庫に勤務していた男性がウォークアウト(職場放棄)を組織したが、この男性はこの直後に同社を解雇されている。ある意味ベゾズ氏はトランプ氏と同等か、それ以上の強権をかざしてきたのだ。しかもアマゾンはソーシャルメディアなどへの書き込みをチェックし、従業員を「スパイしている」として民主党上院議員が書簡でこうした行為をやめるようアマゾンに呼びかける、という事態まで発生している。
それでもコロナ失業が増えていたこともあり、雇用を提供するアマゾンには表立った抗議行動が起こされずにいた。ベゾズ氏もBLM抗議行動が盛んだった折には「BLMに賛同することにより、アマゾンが顧客を失うことになっても構わない」と発言、1000万ドルを人種平等などを訴える団体に寄付する、など公平な企業のイメージ作りを行ってきた。
ところが秋になり、ついに従業員の不満が爆発した形で、全米各地で従業員による抗議行動、職場放棄などが一斉に起こり始めた。9月にはコネチカット州ウィンザーでアマゾンの新しい配送センターを建設中の労働者らが「アマゾンは従業員の安全に対して無責任である」として一部従業員や地方自治体議員らが抗議の声を上げた。ウィンザーではアマゾンの施設誘致のために880万ドルの固定資産税優遇などを行っており、その投資に見合うだけの地域雇用が生み出されていない、というのも抗議の理由のひとつとなった。
10月に入るとミネソタ州でも従業員による職場放棄が起った。アマゾンでは「プライム・デー」と名付けたアマゾンプライム会員向けのセールスイベントを行っており、毎年のようにこのプライムデーを狙ってのストライキなどが起きるが、今年はそれにコロナパンデミックが加わり、抗議行動も大規模になっている。