しかし、背後には、いじめられるのは本人の性格の弱さにも問題がある、親の育て方や家庭に問題があるという俗説がまだまだ根強く、学校と地域がいじめた多数の子どもをかばおうという意識が根強いという風潮がある。
問われる教師像
今回の大津のいじめ事件では、自殺した中学生がいじめられている現場に教師たちは随分遭遇している。女子生徒からいじめられているという報告も受け、担任の教師は、生徒がプロレス技をかけられ、半泣きになっている生徒を見ている。父親から金遣いが荒くなったのはなぜか、という相談もされている。しかも「自殺練習」さえさせられていた。
ところが教師や学校(教委)は生徒や親からのいじめのSOSに気づかなかったという。
学校とは子どもたちにとってどのような場でなければならないのだろうか。学習指導、生活指導など子どもたちの成長のために必要な援助や指導が行われなければならないのは当然だが、まず第一に子どもの安全が保障されている場でなければならない。教師の未熟さと教員集団の子どもたちへの見守り体制が多くの学校で不備であることがこのような事件が頻発している原因の一つになっているのではないか。ここでは学校教育の役割や教師とはどのような職かが問われているのである。
日本全国で多くのいじめ事件がその後、裁判になっている。自殺した子どもの親たちの孤立した闘いが続いている。
いじめを減らすために
学校とは子どもの居場所であるが、それは安全で安心できる居場所でなければならない。本来的に日本の学校は、そのシステム故にいじめが起きることは避けられない。であるならば、子どもの安全を守る教師たちの見守り体制が重要になっている。
しかし、今全国から、学校・教委や教師が問われているのはその能力への不信だけではなく、隠ぺい体質である。
学校の信頼回復の方策はまず、学校の運営にあたって、地域、保護者と学校が連携をつくることだ。今回のような地域社会を巻き込む問題が発生したら、今までのような教師だけの判断ではなく、地域住民、保護者、学校の協議機関での話し合いで学校の取り組みや認識のずれを埋める努力が必要になっているのではないか。
いじめを一掃することは難しい。しかし、いじめを減らし、被害者を少なくすることは可能である。
いじめ対策には次のような対策が必要だ。一番大切なことは、もっと学校を楽しい場にすることだ。子どものストレスを減らす努力をしよう。競争と管理から子どもと教師を解放することが必要だ。次に、地域や保護者と協同して学校づくりをしよう。学校づくりに子どもたちの意見をもっと聞こう。民主主義的な学校運営をすることだ。多くの外部の声を入れ、開放的な学校づくりが必要である。
事件が起きる度に、第三者機関をつくるという愚はおわりにしたい。
(参考文献)
『いじめとは何か』森田洋司 中公新書
『いじめの構造』内藤朝雄 講談社現代新書
『君たちはどう生きるか』吉野源三郎 岩波文庫
『教育の論点』久富義之他 旬報社
『いじめ自殺』鎌田慧 岩波現代文庫
『いじめの直し方』内藤朝雄 荻上チキ 朝日新聞出版
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