2024年4月26日(金)

子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年7月31日

 この世界にいじめは横行する。セクシャルハラスメント、職場でのいじめ・パワーハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメント、配偶者や恋人・親など家族による暴力<ドメスティックバイオレンス>)

 大人の世界では様々な種類があるが、どれも質的には子どもの世界のものと同じである。

 このような「いじめ」にあった被害者がどのような人生を送るか、またはどのようにして自殺に追い込まれたか、ていねいな検証が行われない限り、繰り返し発生する。

異質な存在はターゲットにされやすい

 大津のいじめ自殺事件では、様々な深刻な事実が明らかになっている。

 先の定義から考えると、(1)自分より弱いものに対する (2)反復・継続した攻撃・排除であって、しかも攻撃されたものが (3)苦痛を感じるものでなければならない。

 自分より弱い者を選び、もしくは徒党を組むことによって多数で、繰り返し攻撃を加える。上記の攻撃の型を一つ選んだだけでも十分にいじめとなる。しかも、大津の事件では自殺の練習をさせられていた。

 1937年のいじめはどうか。舞台は東京、山の手の(旧制)中学である。生徒はほとんどが官僚、大企業の役員、医師、弁護士などエリート層の息子たちである。ここでいじめのターゲットになっていたのが、この地域の中学では希な豆腐屋の息子だった。父親は金に困って金策に出ている。弁当は家業のものですます。この浦川は家業の手伝いでしょっちゅう学校を休んでいる。この地域の中学では数少ない貧困層である。いわば異質の存在である。異質の存在は、排除や攻撃、差別の対象となりやすい。いじめは少数者がターゲットになる。

日本の学校の仕組みに原因が

 なぜ、学校でこれほど頻繁にいじめが起きるのか

 それは学校が他の社会と比べてもいじめが起きやすい場所だからである。子どもたちのストレスを作り続ける日本の学校の仕組みにいじめの原因がある。

 (1)クラスという小さな箱の中に多数の子どもが詰め込まれているという学校の作り方 (2)同じ内容のカリキュラムを一斉に学ぶという管理と競争のシステム (3)1年間(中には数年に及ぶ)という長期にわたって子どもたちが同じ「密で濃い」閉ざされた空間の中で過ごさざるを得ない (4)日本の学校の集団優先の全員一致主義が子どもの意識の中にも大きく影響している

 日本の学校の構造は固定されたクラスや座席からつくられ、いじめから逃れられないようにできている。1937年のいじめでも、「いじめられっ子」の浦川の席の後ろは「いじめっ子」の山口で、周囲をそのグループに取り囲まれていた。 

 子どもたちは、同じクラスで、規則や教師のまなざしの中で管理と競争という過酷な環境の中で1年間(中高一貫では6年。中には小中高12年も一緒と言う学校もあるが)を過ごす。


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