2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月10日

 2012年7-8月号の米Foreign Affairs誌で、Kenneth N. Waltz米Saltzman Institute of War and Peace Studies上席研究員は、イランが核武装したほうが、相互抑止作用も働き、イラン自身もその行動が慎重になり、中東の平和に貢献する、と論じています。

 すなわち、イランの核開発については、三つの見通しが可能である。一つは、制裁を強化して、イランの核開発を放棄させることであるが、これは制裁を強化すればするほど、自衛のために核を持つ気持ちにさせる。第二は、日本のように核武装能力を持ちながら自制させることであるが、これはイスラエルが黙っていないであろう。第三は、イランの核武装は認められないと宣言しつつ、事実上はなにもしないことであり、その先例はいくらでもある。

 むしろ中東におけるイスラエルの核の独占は不安定要因であり、それに対するバランスがあった方が良い。

 イランの指導者は非理性的であると心配する向きもあるが、権力者はそんなに非理性的ではあり得ない。また理性的であるにしても、核を背後に他の分野で攻撃的になるという向きもあるが、中国が核武装してから特に侵略的にもなっていない。イラン自身にとって貴重な核兵器をテロリストに渡すというようなこともあまり考えられない。中東全体に核武装が拡散するというが、イスラエルは1960年代以来核を保有しているが拡散していない。インドとパキスタンは核武装したあと安定した関係を維持している。イランの核武装は、中東をより安定した地域にするであろう。歴史的に、核能力の出現は安定をもたらしている、と論じています。

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 上記論説は、イランの核武装は心配ないという論拠を列挙した論文です。たしかに、この論文どおりとなる可能性はありますが、それ以外の可能性にも備えなければならないのが国際政治の常であります。


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