2024年12月8日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月1日

 米科学・国際安全保障研究所の報告書で、David Albrightd同研究所所長とOlli Heinonen元IAEA事務局次長が、P5+1とイランとの核交渉は順調な滑り出しをみせているが、イランが核兵器開発の研究をしていたと疑われている、旧「物理研究センター」の活動を明らかにして、イランは核武装に向かっているとの疑惑を払拭すれば、交渉妥結への道が開けるだろう、と言っています。

 すなわち、先般のイスタンブールでの協議は成果を挙げたが、イランが核兵器獲得を目指していないとの確証を得るには、イランは(1)過去の軍事的核活動の実態を明らかにし、(2)今後、核兵器を製造しないという約束を具体的な形で示さなければならない。

 そのための最も直截的な方法は、イランがIAEAと協力することだが、過去の経緯から言って、それは時間がかかるだろう。そこで、核兵器は作らないという意図を示すために、イランは先ず小さな、しかし重要な一歩を踏み出すべきだ。それは、1998年まで存在し、その後のイランの核兵器関連活動の基礎を築いたと見られる「物理研究センター」(Physics Research Center,)での過去の軍事的核活動を明らかにすることだ。

 米科学・国際安全保障研究所は同センターの1,600以上のテレックスを入手しており、従って、イランが同センターの活動の軍事的側面を否定するのは難しいだろう。

 実際は、たとえイランがそれを認めても、IAEAの懸念の全てに答えることにはならないが、「センター」問題のほとんどは早期解決が可能であり、その解決はより広範な軍事的側面を解決する道を開くことになるだろう。

 イランが核活動の軍事的側面を正直に認めなければ、P5+1との交渉は頓挫するかもしれず、そうなれば、イラン攻撃の可能性は著しく高まるが、イランが正直に話せば、交渉過程における信頼性は劇的に高まり、イランの核危機の平和的解決の扉が開かれるかもしれない、と言っています。

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 イスタンブールで開催されたP5+1とイランとの核協議は、イランがウランの20%濃縮を止め、所有する20%濃縮ウランを国外に撤去し、フォルドウの地下濃縮施設の操業を凍結、ナタンツにも新たに遠心分離機を設置しない、との線で合意が得られそうだと報道されており、P5+1側もイラン側も協議の成果を強調しています。実際にそうなれば、当面の危機は回避される見通しとなります。


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