2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月10日

 ただ、注目すべきことは、このような論文がForeign Affairs誌の巻頭論文として掲載されたことです。米国内で、イスラエルによるイラン攻撃、そして、それに対する米国の暗黙の支持に反対する雰囲気が強くなっていることを示すものと言えましょう。

 筆者のケネス・ウォルツ(1924年生まれ:88歳)は、現代国際政治学における最高権威の1人であり、「構造的リアリズム(ネオリアリズム)」という学派の祖とされています。彼の議論の特徴は、(1)国際政治の重要な要因は、国家同士のパワーバランス構造がどうなっているか、という制度的・外的要因である(2)国家間関係が最も安定的である状態は、大国同士のパワーの均衡である、というシンプルな原則に基づいていることにあります。

 ウォルツは、1995年に発表した著書“The Spread of Nuclear Weapons”の中で、「十数カ国ほどまで核保有国が増えた方が世界は安定する」という持論を展開し、大きな論争になりました。今回のイラン核武装支持論も、こうした持論を反映させたものと位置付けられます。

 なお、彼が学界における権威であることに間違いはないものの、ウォルツの議論は理論上の妥当性を指摘しているにすぎず、あまりに現実を単純化しすぎてはいないか、という批判があります。

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