2024年11月25日(月)

中東を読み解く

2020年10月30日

「十字軍の再来」と対決強めるエルドアン 

 しかし、フランスの風刺画をめぐる問題はイスラム諸国に波及し、「欧州対イスラム世界」という敵対構図に発展しつつある。イスラム教徒にとって非難の対象は、過激派のテロよりも、マクロン大統領による「預言者に対する風刺の擁護」である。サウジアラビアのジッダでは、フランス総領事館の警備員の襲撃事件も起きている。

 フランスに対する抗議や仏製品不買運動はトルコ、クウェート、カタール、パレスチナ、パキスタンなどに拡大。イラン外務省は「表現の自由の名で、イスラムへの嫌悪感を煽っている」とフランスに抗議した。メディアによると、マレーシアのマハティール元首相は「フランスによる過去の虐殺を考えれば、イスラム教徒は数百万人のフランス人を殺害する権利がある」とツイート。激怒したフランス政府がこのツイートをツイッター社に削除させた。

 だが、何といってもフランス批判の急先鋒はトルコのエルドアン大統領だ。エルドアン氏はマクロン大統領がイスラム教徒に無信仰を押し付けているとして「精神的な治療が必要だ」とまで批判、これに反発したフランスが駐トルコ大使を本国に召還した。

 エルドアン氏は28日、今度はシャルリエブドが「エルドアン 私生活は愉快」と題する風刺画を掲載したことに激怒、「十字軍の再来だ。欧州の指導者に反イスラム主義というガンが広がっている」とし、マクロン大統領の「憎しみに満ちた政策」を非難した。この風刺画は下着姿のエルドアン氏がイスラム教徒女性のスカートをめくる様子を描いており、同氏が怒るのも無理はないとの声もある。

 エルドアン氏とフランスとの対立の原因はこの問題だけではない。リビアの内戦やナゴルノカラバフ紛争、東地中海のエネルギー資源問題などでも角を突き合わせている。エネルギー資源問題では、マクロン氏がトルコと対立するギリシャ側に立っており、エルドアン氏には我慢がならないようだ。


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