マクロンの過激派封じ込め法案
しかし、エルドアン氏はじめ、イスラム諸国がフランスに反発を強めている背景はもう1つある。それはマクロン大統領が12月に国会に正式提案しようとしている「過激派封じ込め法案」だ。フランスでは移民などのイスラム教徒が独特のコミュニティを作り、その地域のモスクなどが過激派の温床になっているという実態がある。
こうしたコミュニティは自分たちだけの世界に閉じこもり、フランス社会との統合を拒否し、独特の“文化”を育んできた。しかし、マクロン大統領はこの「宗教的な分離主義」こそが過激派増殖につながるものと懸念、分離主義を壊してフランス社会へ統合させるというのが法案の狙いだ。
米仏メディアの報道によると、同法案はイスラム社会に対する外国からの影響力の排除、モスクが受ける資金の監視、穏健な宗教指導者の養成、イスラムの宗教学校の創設禁止などが含まれており、マクロン大統領はこの構想を今月初めに発表した際、「イスラム教は世界で危機に陥っている」と指摘していた。
しかし、大統領のこのイニシアチブには「イスラム教とその文化を破壊するもの」「イスラムと過激派思想は違う」といった批判が出ている。中東などのイスラム教国はイスラムを広めるため、欧州など世界各地のモスクを支援しており、「法案はイスラムの普及やイスラム教徒への支援を阻害するもの」との懸念を強めている。預言者の風刺画をめぐる対立の根は深い。
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