2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年8月6日

 艾は「裁判を通じて公安局、税務局、法院による三位一体の違法行為を世界中に知らせ、社会を変化させる」と訴える。一方、「維穏」を優先する公安当局は、裁判当日、原告側の艾を自宅に軟禁し、出廷を阻止した。共産党は「ネット革命家・艾未未」の下で、網民ネットワークが団結を強めるのを恐れているからだ。

共産党機関紙が伝えた「警戒人物」

 ノーベル平和賞候補にもなった人権活動家・胡佳も、筆者に「維穏は国家犯罪」と漏らした。「毒酒を飲んで渇きをいやすようなもので、彼らは不都合な言論を消そうと、メディアを規制するが、そうすれば、記者も市民も不満をためる。また微博上の発言を削除されれば、彼らは『言論の自由』の意味を知らなくても『言論の自由』の必要性に覚醒する。当局の手法は逆効果だ」 

 共産党大会を秋に控えた今年は「維穏年」だ。常に秘密警察「国保」(公安局国内安全保衛隊)に行動を監視される胡は、ある国保からこうささやかれた。

 「今年は2月から11月まで毎日が敏感な日だ。2月はジャスミン騒動1年、3月は全国人民代表大会、4月からは『六四』(天安門事件)記念、7月は共産党創設記念、10月は建国記念、最後は共産党大会だ」

 党機関紙「人民日報」(海外版)は7月31日、政府系シンクタンク・中国現代国際関係研究院米国研究所の袁鵬所長の評論を1面に掲載。「中国の真の脅威は軍事衝突や国際情勢にあるのではなく、内部の体制改革や社会情勢にある」と指摘したが、これは中国指導部の本音を表していると話題になっている。

 評論では特に中国の体制を転換させようとする米国の動きを警戒。「民主化・自由を推進する際の『上から下』という伝統的モデルではなく、人権派弁護士や地下宗教、反体制活動家、ネットオピニオンリーダー、社会的弱者を通じ、『下から上』へのやり方で中国の末端社会に浸透し、中国変革のための条件をつくり出そうとしている」。共産党が、人権派弁護士や反体制活動家、網民らが、社会変革をもたらす「警戒人物」と警戒している表れだろう。

中止となった「8月日本特集」

 反体制の動きだけではない。実は「日本」も当局によって「維隠」の対象と位置づけられている。反日デモが起これば、日本に弱腰だとして政府批判が起こるほか、これに乗じて社会に不満を持つ民衆が批判の矛先を「日本」から「反共産党」に変えるからだ。


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