もちろん、イスラエルも困難な決定をしなければならない。アラブ・ムスリム世界との関係正常化の鍵は、アラブ連盟が承認した2002年のアラブ和平構想にある。イスラエルがパレスチナと和平を行えば、アラブ世界は、イスラエルとの関係を正常化するという約束がこの中心にある。この提案には、イスラエルに受け入れ難いものもあるが、パレスチナとの紛争を解決することほど、イスラエルにとって緊急の課題はない。2007-2009年にイスラエル交渉団を率いた自分(リヴニ)は、解決は可能だと信じている、と述べています。
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ツィピ・リヴニ女史は、カディマの女性党首として2009年の総選挙では、カディマを国会での第1党にしましたが、連立政権を形成できず、結局、ネタニヤフ氏が右派連合というべき連立政権の樹立に成功し、政権の座を取りました。その後、カディマの党首はモファーズ元国防大臣になり、カディマはネタニヤフ政権と大連立を組むという状況になっています。リヴニ元外相のイスラエル政界での影響力は、今やあまり大きくありませんが、彼女は有力な政治家であり、イスラエル国民の意見の重要な部分を代表している人です。
イスラエルにとり、エジプトとの平和条約は、「エジプトとの平和がある限り、戦争はない」と言われる程、大変重要です。イスラエルは、アラブの春がエジプトでのイスラム過激派の台頭につながらないかと危惧してきました。ムスリム同胞団出身のモルシ氏の大統領就任を好ましくないと考えているイスラエル人も少なくありません。しかし、リヴニ元外相は、エジプトが民主化するという楽観論も、イスラム過激派の国になるという悲観論も排し、モルシ氏に対してはオープン・マインドな姿勢で臨んで行くべきであると提唱しています。イスラエルは、おそらく、そうすべきでしょう。
モルシ大統領が平和条約を廃棄する等の挙に出た場合は別として、あまり注文をつけすぎることは良くありませんし、エジプト軍と組んでモルシ氏を牽制していると見られることは特に避けるべきでしょう。イスラエルとしては辛抱強くエジプト情勢を見守り、注意深く対応することが重要です。
リヴニ元外相が2002年のアラブ和平構想に立ち返り、イスラエル・パレスチナ交渉の推進を提唱していることには勇気付けられます。イスラエルとしては、入植地問題など、和平交渉再開の環境作りに努めることが肝心でしょう。
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