2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年6月6日

 ファイナンシャル・タイムズ5月16日付で、同紙記者Jane Kinninmontが、「アラブの春」の重要な成果の一つは、西側の政策当事者とエジプトのムスリム同胞団との関係改善であり、特に経済問題に関しては、西側とイスラム主義者は同調するものがある、と指摘しています。

 すなわち、世論に敏感な同胞団は、経済面で実行力のある組織であろうとしており、同胞団の政党である自由公正党が選挙綱領で先ず掲げたのは、コーランやシャリア法でなく、失業、不平等、そしてお粗末な健康管理制度対策だった。もっとも、同胞団の経済政策自体は、社会的正義や腐敗との戦いに重点を置いているとはいえ、過去の政権のそれと大きく変わっているわけではない。

 しかし、1979年のイラン革命の時とは対照的に、新たに権力を握ったイスラム主義政治家は、西側との関係を望んでいる。チュニジアとモロッコの主流イスラム派も、自由貿易を重視し、世界の投資家が雇用創出を支援してくれることを期待している。また、エジプトのムスリム同胞団は西側の経済ミッションを歓迎しており、自由公正党は3月に英国で英国の投資家や政治家と会っている。

 従って、西側がエジプトの経済的課題を理解することが、エジプトとの関係を築くのに有益だろう。エジプトは、貧困、外資の引き上げ、財政赤字、低賃金等、いくつもの経済的困難を抱えている。雇用創出については西側の投資家は支援できるが、エジプトの持続的発展のためには、貿易や投資だけでは不十分であり、勤労条件の改善、識字率の向上、飲料水の確保、大気汚染(世界で6番目にひどい)対策などにも取り組む必要がある。

 ムスリム同胞団がこれらの問題に対処できなければ、民衆は今度は同胞団に対して反乱を起こしかねない、と言っています。

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 今やエジプトで最も重要な政治集団となったムスリム同胞団に対し、欧米ではイスラム主義組織ということで強い警戒心が持たれていますが、同胞団は、西側の経済ミッションを歓迎し、西側からのエジプトの経済振興への支援を望むというように、経済政策に関しては極めて現実的なようです。


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