2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2020年12月1日

30年目標の達成は困難か
地熱普及のボトルネックとは

 だが、国内における地熱発電の普及は進まない。経済産業省・資源エネルギー庁の公表によれば、18年の日本の発電電力量に占める再生エネルギーのシェアは、太陽光6%、バイオマス2.2%、風力0.7%に対して、地熱はわずか0.2%にすぎない。

 国の掲げた30年度のエネルギーミックス(あるべき電源構成)では地熱発電の目標を約150万kW(国内総発電量の1~1.1%程度)としているが、実現に向けた国の具体的な方針は示されず、達成は難しい。

(出所)JOGMEC資料を基に、ウェッジ作成 写真を拡大

 「地熱発電は開発から発電まで10年近くかかる。今の国内の開発状況を見渡せば、30年度の目標達成はほぼ不可能だと分かる」と、業界関係者は語る。

 地熱発電が普及しない主な理由の一つは、見えない地下資源を採掘するための「コスト」と「開発リスク」だ。電力中央研究所の窪田ひろみ上席研究員は「井戸を1本掘るのに3億~5億円かかるが、地熱貯留層の割れ目にうまく当てないと蒸気が出ない。掘削調査で井戸を複数掘ったにもかかわらず、十分な蒸気・熱水量が確保できず、開発を断念する事業者も多い」と語る。こうした開発の難しさから、収益性の見通しが立たないことも多い。

 さらに、日本地熱学会の海江田秀志会長は「地熱貯留層は山岳地帯に多いが、地上面が平地でなければ坑井基地や発電所を建設できない。貯留層をめがけて平地部から斜めに採掘したり、道路の拡幅や橋を付け替えたりと、海外に比べて開発コストもかかる」と指摘する。なんとか好条件の資源地が見つかったとしても、すぐに開発できるとは限らない。日本の地熱資源の約8割は国立・国定公園内にあり、開発が規制されているからだ。15年10月には区分の低い第二種、第三種特別地域について、指定区域外からの傾斜掘削(斜め掘り)という条件付きではあるものの開発規制が緩和された。だが、依然、最も規制の厳しい特別保護地区及び、それに準ずる第一種特別地域に関しては一切開発が認められていない。

 また、地熱資源が豊富な場所は温泉地である場合も多く、採掘には、温泉法に基づき、地元の温泉事業者の同意を得なければならない。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)地熱統括部の尾崎敏樹担当調査役は「温泉と地熱開発では掘削深度が異なるものの、同じ地下を掘る以上、将来的に影響が出ない保証はなく、地元の温泉事業者の理解は一朝一夕には得られない」と開発交渉の難しさを語る。


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