2023年1月31日(火)

Washington Files

2020年12月21日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

トランプがバイデンを救う?

 そこで最近、ささやかれ始めたのが、トランプ氏による「自己恩赦」を意外にもバイデン氏が内心期待しているとする観測だ。

 ロサンゼルス・タイムズ紙の元ワシントン支局長で現在、同紙コラムニストのドイル・マクマナス氏が今月2日付同紙論壇ページで以下のように論じている:

 「トランプ大統領は常道を無視し慣例破りを旨としてきただけに、1月20日退任前に『自己恩赦』に踏み切るかもしれない。その場合、多くの米国民が怒りを爆発させるだろう。しかし、それがどんなに忌むべき行為だったとしても、結果的にバイデン次期大統領に対する『意図せざる贈り物back-handed gift』になり得る。なぜなら、トランプが自分に恩赦をした瞬間に、新政権にのしかかる国論を分断させかねない『トランプ処理問題』の重圧から解き放たれることになるからだ。

 バイデンはまさにジレンマに直面している。何人も法の上に立つことを許されないというのがアメリカ・デモクラシーの根本精神である一方、バイデン大統領が選挙で打ち負かした前任者を直ちに起訴に追い込むことになれば、ただちに党派論争を再燃させ、バイデンが望んでいた『超党派的政治の回復』というスローガンが水泡に帰すことになる。彼はこの8月、トランプ恩赦問題で意見を求められた際、『誰も法の上に立つことはできない』と述べたが、他方で『大統領経験者の刑事告発をうんぬんすることはデモクラシーのためには多分ならないだろう』ともコメントしている。

 従って、トランプが前もって自分に対する恩赦を出したとすれば、バイデンにとってのジレンマは克服され得るだろう」

 そのトランプ大統領は、選挙での敗北が誰の目に明らかになった今も、「選挙の不正」を根拠に「自分こそが勝者だ」と訴え、政権明け渡しを拒み続けている。バイデン氏にとっては、大統領就任式まで40日余と迫る中、政権移行作業もはかどらず、実に厄介かつ目障りな存在に違いない。その上に、前任者の尻ぬぐいでまでさせられることになろうとは……さぞかし心中は穏やかではないだろう。

  
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