2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年3月3日

トランプの新たなアピールとバイデン批判

 トランプ前大統領は新党結党を否定すると、共和党内の「結束」に訴えました。共和党には結束が必要だというのです。

 20年米大統領選挙においてバイデン陣営は、「米国社会の結束」を主要なメッセージにして戦いました。結束は同陣営の象徴的な言葉でした。ジョー・バイデン氏は1月20日の大統領就任式においても、結束を強調しました。今度はトランプ氏がその結束という言葉を用いて、大統領退任後も自分が共和党を率いる指導者であるという演出をしたのです。

 トランプ氏は結束について語ると、1月6日に発生した米連邦議会議事堂乱入事件には触れずに、バイデン大統領の批判に演説の時間を費やしました。まず、バイデン氏が雇用とエネルギー政策を重視していないと非難しました。同氏がカナダから原油を米メキシコ湾岸の製油所に運ぶ石油パイプラインの建設許可を撤回する大統領令に署名したからです。

 続けてトランプ氏は根拠を示さずにバイデン大統領を「反女性」で「反科学」であると呼びました。これこそ正真正銘のフェイク(偽)です。

 バイデン氏は閣僚と閣僚レベルに12人の女性を起用しました。これに対して、トランプ氏は同時期に女性6人のみを採用しました。

 周知の通り、バイデン氏は科学重視の選挙運動を展開しました。米疾病対策センター(CDC)及び食品医薬品局(FDA)は政治介入を受けずに、科学に基づいて判断するべきであると繰り返し述べています。

 トランプ前大統領が政策の中で、時間を割いたのが移民政策でした。トランプ氏は自分のレガシー(政治的遺産)である米国南部とメキシコとの「国境の壁」建設を停止したバイデン氏に対して恨みを抱いているようです。「国境を解放したバイデンは米国民を裏切った」と語気を強めました。

 加えて、新型コロナウイルスに対するワクチン接種を加速しているバイデン氏を強く意識したメッセージがありました。

 仮にワクチン接種が順調に進み、感染拡大が収まると、バイデン氏は「コロナを収束させた大統領」として米国民の記憶に残ることになります。トランプ前大統領はそれを全く受け入れられません。米医薬品大手ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)が開発したワクチンはトランプ政権のクレジット(手柄)だと、トランプ氏は主張しました。バイデン氏にクレジットを奪われたくないという気持ちが顕著に現れていました。


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