2022年8月17日(水)

中東を読み解く

2021年3月6日

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対テロ・ドローン攻撃に規制

 バイデン大統領の武装組織に対する対応への変化は対テロ戦略にも及んでいる。ニューヨーク・タイムズ(3日)によると、大統領は戦場以外でのテロリストへのドローンによる「標的殺害」のルールを厳格化し、作戦の実行にはホワイトハウスの承認が必要になるよう変更した。

 このドローンを使った「標的殺害」はテロリストと思われる人物を監視し、ほぼ本人と確認が取れれば、攻撃するという暗殺作戦だ。国防総省と中央情報局(CIA)がそれぞれ別個に実施してきた。ブッシュ政権から始まり、オバマ、トランプ各政権と続いてきたが、特にオバマ政権第1期に急増し、イエメン、ソマリア、アフガニスタン、パキスタンなどで実行されてきた。

 民間人を巻き込まないよう、作戦には、ホワイトハウスの事前承認を得るなどの厳格なルールが定められていたが、トランプ政権になって基準が緩和され、国防総省、CIAとも独自の判断で作戦を実行できるようになった。特にトランプ政権の後半では、ソマリアの国際テロ組織アルカイダ系の「アルシャバーブ」に対するドローン攻撃が多かった。

 オバマ政権下の作戦では、イエメンで結婚式や葬式の車列などがテロ組織と誤認されて攻撃を受け、民間人に多数の犠牲者が出るなど弊害が指摘されてきた。同紙によると、バイデン政権発足後、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)がドローン攻撃の規制を政府内に指示した。

 国家安全保障会議のスポークスマンは「暫定指針」としてドローン攻撃のルールが変更されたことを同紙に確認した。ヘインズ新国家情報長官はオバマ政権下でドローン攻撃のルールを策定した人物とされ、サリバン補佐官らとともに作戦ルールの見直しを検討していると見られている。

 バイデン政権はイエメンの反政府武装勢力フーシ派に対するテロ指定も解除したが、問題はこうした一連の方針がイランや中東の武装勢力に弱腰と見られかねないということだろう。最近になってフーシ派がサウジアラビアへのミサイル攻撃を激化させ、オマーン湾ではイスラエル企業所有の貨物船が攻撃を受ける事件も発生している。

 イスラエルはイラン革命防衛隊の攻撃と断じ、シリアにある防衛隊の拠点を空爆した。フランシスコ教皇はイラクでは、シーア派の指導者シスタニ師らと会談するほか、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで被害を受けた都市を訪問したり、大規模なミサも執り行ったりする計画だ。きな臭さ漂う中東での教皇の無事を祈るばかりだ。

  
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