2024年12月12日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年10月6日

 胡錦濤と野田の立ち話について報じた国営新華社通信(外交部発表)も、二転三転する異例の混乱が見られた。

 会談終了直後に「(国有化に)断固反対する」との胡の具体的な発言が伝えられたが、25分後に胡が「中国の立場を表明した」というだけの簡単な内容に差し替えられた。さらにその日夜に再び最初の胡の厳正な対日発言が復活するのだ。

 中国側関係者によれば、中国外交部アジア局の対日幹部はその直後から、「睡眠時間が3時間」(アジア局幹部)という極度の緊張状態の中で会議続きの毎日を送ることになるという。外交部で対日政策を統括する傅瑩副部長は、申し入れを行いたいとする丹羽宇一郎駐中国大使の面会に応じないこともあった。

 外交部幹部は日本政府の国有化をめぐり、胡錦濤はじめ中南海(国家指導部)に細かな情報を報告していたのか。石原を排除すれば中南海は納得すると考え、中南海が国有化に対してこれほどまでの強硬な反応を予想していなかったのではないか。または中南海が神経を尖らせるインターネット上の民意を読み違えたのではないか。

中国に吹き荒れる「漢奸」の2文字

 「国連総会で『日本は釣魚島を中国から盗んだ』と演説した楊潔チにしても、中国の立場を世界に訴えているというより、中南海に向けて自分はちゃんと対日強硬姿勢を示しているとアピールしているようにしか見えない。彼は党大会後に国務委員(副首相級)に出世したいと思っているから」。北京の外交筋は冷ややかに見ている。

 中国は中南海が「あっち」を向けば、官僚たちはみんな「あっち(同じ方向)」を向く。今は日本に関して「強硬」を示していれば安心という心理が働いているからだ。日本から輸入される海運貨物の通関検査強化の動きが伝えられるが、日本政府幹部は「影響はほとんどない」と明かす。中央政府から検査強化に関する通知や指示が出ていることはないとされ、「日本排除」をしておけば、上(中央)からも評価されると思い込んでいる地方の当局・企業が自主規制した結果だと筆者は見ている。


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