筆者も参加した内閣官房社会的包摂推進室の調査(2012年9月)によれば、社会から排除されるリスク要因には以下のようなものがある。
【子ども期】
本人の障害、出身家庭の貧困、ひとり親や親のいない世帯、児童虐待・家庭内暴力、親の精神疾患・知的障害、親の自殺、親からの分離、早すぎる離家
【教育関係】
学校におけるいじめ、不登校・ひきこもり、学校中退、中卒、学齢期の精神疾患・その他疾患
【成人期】
本人の精神疾患・その他疾患、初職の挫折、リストラ・倒産等、職場における人間関係トラブル、劣悪な労働環境、不安定就労・頻繁な転職、風俗関連産業・援助交際
若年妊娠・シングルマザー、結婚の失敗・配偶者からのDV、親との断絶・帰れる家の欠如、住居不安定、借金
以上のようなリスク要因が複合的に積み重なることによって、人は社会から排除されるのである。
4人のケースもそうだが、一つのリスク要因、たとえば、父の失職とか、父母の離婚という一つの原因だけで社会的に排除されるということはめったにない。その後、複数のリスク要因が重なり、さらに事態が悪化し、意欲も失い、結果として排除されることになる。
従って、社会から排除を受け、社会の周辺で暮らす若者たちへの支援は、一通りではない。方策は多岐にわたるものでなければならない。多様な専門家も必要になる。
しかも、子どもや若者本人のリスクに限らず、親や祖父母までの人生の積み重ねが社会的排除の大きなリスク要因になっているケースも多い。社会的排除の要因――それは多岐にわたり、複層的で、世代も超える――をひとつずつ解きほぐしていくことは容易ではない。
高校中退は、低学歴としてその後の職場での早期のリストラ、解雇、劣悪な労働環境、不安定就労などの温床となるという意味で、若者の周縁化を招く大きな要因である。中途退学は若者たちの人生を阻み、次なる貧困、貧困の連鎖を生み出していく。
だから高校中退は食い止めなければならないのだが、彼らは実に「あっさり」と中退していく。4人が幼い頃から社会から排除され、「自分ならできる」という自己肯定感を抱いていないように、彼らはそれまでの環境のなかで学ぶ意欲を徐々に喪失しているため、中退の段階になって食い止めようとしても、もう遅いのだ。
人生に対する意欲の喪失は、社会的排除からもたらされる。そして社会的排除は貧困を含むさまざまな多岐にわたる要因からもたらされる。とすれば、高校中退を防ぐには、中退に追い込まれるよりもっと早期の段階から、多様な専門家による複層的な介入を行うしかない。
昨年ごろから、生活保護世帯の中学生に対する学習支援が全国で、少しずつ広がりを見せている。「子どもにとって最大の社会保障は教育」であり、「人生前半の社会保障は教育」という言葉が日本社会でも少しずつ受け入れられてきた証明なのかもしれない。
子どもや若者、そして困難を抱えた親たち、とりわけ一人親を支える地域のネットワークづくりと、集団への適応が難しい若者向けに、コミュニケーション能力の向上、生活リズムを整えるなど学びの場への復帰や就労へ向けて、トレーニングとしてのプログラムが用意されている居場所が地域社会に必要である。
若者たちを排除する社会から包摂する社会へ転換する時代を私たちは迎えている。
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