2024年11月21日(木)

子ども・家庭・学校 貧困連鎖社会

2012年10月12日

 4人の若者たちから見えてきたことは、彼らが背負って生きていかなければならないのは、親から続く貧困だけではないということだった。

 例えば「美優」の場合を考えてみよう。

 「幼児期の父親のDV」「家庭崩壊」「父親から逃れ、母親とのシェルター生活」「母の失業」「孤立」「母の夜中の水商売(夜は小学生2人だけで留守番)」「母の男が次々に代わる」「家具もないアパート」「低学力」「不登校」、そして行き着いたのが高校中退である。

 これだけリスク要因がそろえば、貧困から逃れるのは極めて困難だろう。幼児期の父親の暴力が美優の心にどれほどの「傷」を残しているか。シェルター生活の中での不安、子どもだけが残されている夜、母と男たちの生活も見せつけられることになる。

 子どもにとって最も大切な場所、家庭が子どもが安心して生きるための居場所になっていないのである。

 麗も、父母の離婚と家族の解体で16歳からひとりで生きることを強いられている。養育を放棄されるという子どもにとって最も残酷なケースだ。雄一のケースは、父母は離婚したのか、もともと結婚しなかったのか、はっきりしない。ひとり親(母子)世帯の貧困、孤立を絵で描いたような家庭だった。しかも障害を持った妹もいる。姉は二人ともシングルマザーだった。そして雄一と姉の一人は高校を卒業していない。

中退後の不安定な仕事

 中退後の彼らの仕事は全員がパートかアルバイトで不安定就労の典型だった。

 美優はコンビニやスーパーのレジ、そしてスナックで約10万円。雄一も倉庫や建設現場で派遣の臨時雇用でとびで働いても8、9万だ。麗は朝から夜中まで働いて20万円。しかし、いつまで体が持つか。遙香も宅配で働いた後、中華料理屋で夜中の2時まで働いているが時給800円ほどしかない。

 中途退学した若者で正規の職に就くことはほとんどない。中途退学が若者たちのその後の人生をいかに阻んでいるか、4人の人生を見るとよくわかる。

 どの子も、このような環境の中で育てば中退しない方が不思議だ、と言っても過言ではない。自分ひとりでは手に負えないほどの圧倒的な貧困に苦しむ子どもたちを、「自己責任」の一言で片づけてしまうのは、残酷ではないだろうか。

貧困から社会的排除へ

 貧困とはどのようなことか、日本社会では意外と知られていない。国立社会問題・人口研究所(厚生労働省の厚生労働省の施設等機関)の調査(2007年)によると、日本国民には縁がないと思われていた「食料の困窮経験」を調査対象者の16%が体験していた。この数字は、日本の貧困率と同じ数値である。

 とりわけ多かったのは一人親家庭の40%で、子どもに食べさせる食糧に困った経験があると答えていた。この40%という数値をどう考えるか。


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