野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2021年5月20日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

( REUTERS/AFLO)

 台湾で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。世界最高レベルの感染対策を誇ってきた台湾に突然降りかかった「災難」に、台湾社会に大きな戸惑いが広がっている。台湾政府は、19日、台湾全土を上から2番目の警戒レベル3に引き上げた。

 外国人の入国者も一律禁止にするなど、スピーディーな対応で抑え込みに乗り出しているが感染拡大のスピードに追いつかない形で、連日2ー300人の感染者を出している。鉄壁の守りを誇ったコロナ対策の優等生、「台湾モデル」を陥落させたのは、台湾を代表するエアラインと下町に広がる伝統的な風俗店という対照的な二つの落とし穴だった。

 現在、台湾を襲っているコロナウイルスが英国型の変異株であることはすでに確認されている。今回の感染源もやはり海外からで、中華航空の国際貨物便パイロットが4月下旬に帰国後、滞在先の隔離用ホテルで感染を広がた。台湾では海外帰国者は通常2週間の隔離が課されているが、航空会社のスタッフについては人材手当の観点から、大幅に3日間へ緩められていた。

 この中華航空のパイロットは帰国時の検査では陰性だったがのちに症状が現れたという。パイロットは桃園国際空港近くの隔離用ホテルにいたが、ホテル側も管理ルールをしっかり守っていなかったとされ、同僚やホテルの従業員ら30人以上に感染者を出している。

 それからの経路はまだ明らかになっていないが、台北市内などの喫茶店「茶芸館」でほぼ同時期に感染が蔓延した。茶芸館というと、台湾茶などを提供する店と思われがちだが、お茶類の提供だけではなく、性的サービスも含めた女性の接待がある店も少なくない。

 こうした店で働く女性たちは比較的年齢も高く、費用も格安であるので、ブルーカラーの高齢男性などが通っており、地元では「阿公店(おじいちゃんの店)」と呼ばれている。茶芸館は台湾社会のなかで高齢者の憩いの場所という面もあり、健全な店と風俗喫茶の見分けは簡単ではない。

 茶芸館は、台湾で「萬華」と呼ばれる地区に集中している。ここは日本の歌舞伎町にあたるような場所で、路地裏に茶芸館が密集して林立しており、合計で150店以上あったと台湾メディアは報じている。

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