2024年4月27日(土)

World Energy Watch

2021年6月15日

温暖化対策が変えるエネルギー価格と安全保障

 企業の責任は、環境問題への取り組みだけにあるのではない。雇用を維持し、製品を通し社会に貢献することも極めて重要だ。石油、天然ガス生産・販売から業態を変えることにより雇用が失われ、従業員の収入が減少する可能性があるならば、その対処も重要だ。加えて、企業収益の維持が困難になれば、株主あるいは地域社会に対する責任も果たせなくなるかもしれない。温暖化問題は重要だが、2030年までに温室効果ガスを大きく削減することにより企業の社会的な責任にどのような影響が生じるかも考えるべき課題だ。

 製品供給も極めて重要な問題だ。途上国では石油製品の需要は成長を続けている(図-4)。自動車台数の増加もあり当面需要は成長を続けるだろう。仮に、オイルメジャーが減産を行うと、供給の主体はロシア、オペック諸国に移り、ロシアも参加するオペックプラスを通し、生産調整と価格コントロールがさらに容易になる可能性がある。原油価格上昇が消費国の経済にも影響を与える。

 さらに、天然ガス生産が減少すれば、欧州市場ではロシアの影響力が強まる可能性が高い。温暖化問題がエネルギーの安全保障問題、地政学にも影響を与えることになる。エネルギーについては、温暖化、経済性、安定供給の問題を常に考える必要があることを我々は肝に銘じておくべきだ。

  
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