Wedge REPORT

2021年7月3日

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(taa22/gettyimages)

 「クールビズ」がスタートしたのは、小池百合子東京都知事が小泉純一郎政権で環境大臣を務めていた2005年。夏だけのノーネクタイ、ノージャケットがいつの間にか‶年中〟であることも珍しくなくなった。日本でも三井住友銀行の本店勤務者がTシャツ、短パンで出勤してもよいことになり、米ゴールドマン・サックスがドレスコードを緩めたといいうこともニュースになった。

『アパレルの終焉と再生』(朝日新書)

 ビジネスシーンにおける服装のカジュアル化が進むなかで起きたのが、新型コロナウイルスによるパンデミックだ。在宅勤務、リモートワークが普及するなかで「スーツ」が着られることはますます少なくなった。『アパレルの終焉と再生』(朝日新書)を上梓した、ファッション流通ストラテジストの小島健輔さんに話を聞いた。

 小島さんによれば、そもそもスーツには階級(クラス)が存在するという。

  • エグゼクティブ(役員クラス)=「誂えのぴったりスーツ」
  • オフィサー(中間管理職、大企業の内勤)=「ブランドスーツ」
  • セールスマン(外回り、営業職)=「吊るし(既製スーツ)」
  • ワーカー(内勤ではない人、非正規就業者など)=「そもそもスーツを着ない」

 「エグゼクティブ」クラスは、今も昔も変わらず存在する。コロナ禍においても高収益を上げている企業は少なくないし、株価も好調だ。一着何十万というスーツを求める層は今でも存在し、むしろ、そうした層をターゲットにしたオートクチュール感覚の仕立て屋が新たに生まれているという。

 一方で「オフィサー」クラスは、大きく減少している。IT化によって中間管理職というポストがそもそもなくなったり、リストラが行われたりして、ボリュームが減ってしまった。百貨店に並ぶブランドスーツが売れなくなるわけだ。

 そして、着用するスーツが大きく変化したのが、「セールスマン」「ワーカークラス」だ。そももそスーツ着用をしなくなるという流れのなかで、それまでのスーツにはなかった機能性や快適性(通気や動きの良さ)を高めた「アクティブスーツ」が登場した。さらに、デフレ社会に適合するように、セットアップで4800円というAOKIの「アクティブワークスーツ」が今年2月に発売されて大ヒットしているという。ワーカークラスのように、それまでスーツを着なかった層にも浸透しているそうだ。

 まさに、現代の〝格差社会〟を象徴するような動きである。エグゼクティブ層は、ますます高いスーツを求め、中間層は目減りし、ワーカークラスは安さを求める。

 「国民の平均給与は、この20年で461万円から431万円に6.5%減少する一方、介護保険、消費増税などで国民負担率は36%から44.6%と、8.6%もアップしています。そのため、消費支出可能額は295万円から238.9万円にまで減少してしまいました。女性の社会進出は60.7%から70.5%へと拡大しましたが、家計のやり繰りが大変で働きに出たという女性も少ないでしょう。そうした状況のなか、一般的なサラリーマンが良いスーツを買いたいとは言い出せない状況になっているのではないでしょうか」

 スーツ全体の販売量は減り続けている。スーツのピークは1992年の1350万着だったという。バブル崩壊直後ではあるが、まだ日本経済全体に勢いがあった頃から、失われた30年とも言える現代までスーツは減り続け、2018年に510万着、コロナの影響で2020年は350万着まで減ったのではないか? と小島さんは見立てている。

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