2022年12月5日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年7月6日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

なぜ報告書に期限をつけなかったのか?

 ペロシ氏がトンプソン委員長に召喚状を発する権限を与えた意図に注目です。議会警察官に加えて、トランプ前大統領も公聴会に招くことを視野に入れているからです。トランプ氏のことですから召喚に応じず、書面による回答で逃げる可能性がありますが、同氏はもはや現職の大統領ではなく民間人です。ペロシ氏の標的になっていることは確かです。

 さらに、ペロシ下院議長が特別調査委員会に対して報告書に期限をつけなかった点にも狙いがあります。上院では共和党の反対で事実上、特別調査委員会設置法案は廃案となりました。

 その際、スーザン・コリンズ上院議員(共和党・東部メイン州)は「もし特別調査委員会を設置するならば、報告書は年内に提出しなければならない」と、民主党に釘を刺しました。というのは来年中間選挙があるので、仮に報告書が年内に公表されなかった場合、共和党に不利に働くからです。

 ペロシ下院議長は中間選挙が民主党に有利に働くタイミングで報告書を特別調査委員会に提出させるために、期限をつけなかったとみてよいでしょう。

「Remember January 6th(1月6日を忘れるな)」

 20年米大統領選挙結果を最終認定するために選挙人投票の集計作業を行っていた連邦議会議事堂に乱入したトランプ支持者の行為は、「民主主義に対する攻撃である」というメッセージを、ペロシ氏は中間選挙の投票日である22年11月8日まで送り続けるでしょう。選挙戦が激しくなると、議事堂乱入事件は「米国に対する攻撃である」というより強いメッセージに変えて発信するかもしれません。

 ペロシ下院議長は1月6日に起きた議事堂乱入事件の記憶が薄れないように、特別調査委員会による公聴会を活用して、トランプ支持者に対して嫌悪感のある無党派層を確実に取り込む選挙戦略に出ることは間違いありません。

 周知の通り、米国では1941年12月7日に発生した日本海軍による真珠湾攻撃の記憶があせることのないように「Remember Pearl Harbor(真珠湾攻撃を忘れるな)」と言います。民主党は中間選挙に向けて、「Remember January 6th(1月6日を忘れるな)」のメッセージを発信し、その日を「米国の民主主義が攻撃を受けた日」として有権者の心に植え付ける戦略を展開するでしょう。

  
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