2022年12月5日(月)

韓国の「読み方」

2021年7月27日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

野党側の「奥の手」は呉世勲ソウル市長か

 尹錫悦氏で本当に大丈夫かという懸念は、しばらく前から出ていた。それに呼応する形で浮上したのが、日本の会計検査院に相当する監査院の崔在亨(チェ・ジェヒョン)院長だった。

 2018年に廃炉が決まった原発についての監査で決定プロセスが不当だったと指摘し、脱原発を志向する文在寅政権と対立した。監査結果は昨年10月に公表されたのだが、その前から政府・与党による妨害が国会で問題になっていた。

 崔在亨院長はこのことで反政権と目されるようになり、野党からは拍手を送られた。そして先月末に任期途中で辞職し、2週間ほど後に国民の力へ入党した。前述のリアルメーター社調査では6%の支持を得た。上位3人とは大差があるものの、野党側としては尹錫悦氏に次ぐ2番手だ。

 ただ監査院長というのは重要ではあるものの、地味な役回りだ。崔在亨氏は職業裁判官出身で、知名度は極めて低い。経歴のほとんどは各地の裁判所で判事を務めたというもので、行政職と言えるのも監査院長と直前の司法研修院長くらいしかない。

 もちろん政治経験はゼロで、本当に選挙を戦えるのかは文字通り未知数だ。そうした人物が「尹錫悦氏がダメだった時のための代打」として期待されるのが、野党側の苦しさを物語る。

 野党側が「その次」と期待するのは、文在寅政権初期に経済副首相を務めた金東兗(キム・ドンヨン)氏。韓国ではキャリア官僚を閣僚に起用することが多く、金東兗氏も経済官庁出身の非政治家だ。

 高卒で就職し、働きながら大学夜間部で学んでから国家公務員試験に合格。企画財政省第2次官や閣僚級ポストである国務調整室長にまで上り詰めた立志伝中の人物だ。副首相への起用は目玉人事の一つだったが、最低賃金の急速な引き上げに反対するなど文在寅政権の経済政策に合わず辞任していた。

 金東兗氏はまだ正式に出馬を表明していないが、「単なる政権交代ではなく政治勢力の交代が必要だ」と意欲を見せる。国民の力からは早期入党に期待する声が出るが、現在は距離を置いている。

 リアルメーター社調査を見ると、野党・国民の力の政治家では前身政党で代表を務めた洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏が4・6%で最高だ。他にも、劉承旼(ユ・スンミン)元院内代表や元喜龍(ウォン・ヒリョン)済州道知事らが出馬表明しているものの、現時点での支持率は微々たるものだ。同党では6月に36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)氏が党代表に就任して旋風を巻き起こしているが、大統領選の被選挙権は40歳以上なので李氏の出馬はない。

 それでも最終的には与野党の一騎打ちで接戦になると予想されている。ただ、普通の予備選が戦われている与党側と違い、野党側はどうなるか全く見通せない。どうしようもなくなったら、4月の補選で圧勝した呉世勲(オ・セフン)ソウル市長を野党候補に担ぎ出すのではないかとも語られており、まだまだ波乱が続きそうだ。

  
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