2024年11月22日(金)

Washington Files

2021年7月26日

5. 米国の国際的信用・地位下落

 トランプ政権発足以来、世界主要国における対米信用度はかつてなく下落した。

 それを裏付けるのが、代表的世論調査機関「Pew Research Center」が毎年実施している「対米好感度」と「米大統領信頼度」意識調査だ。

 それによると、英仏独などの主要欧州諸国、日本、韓国など13カ国における米国に対する「2020年度平均的好感度」は、わずか34%となり、20年前の調査開始以来、最低を記録した。各国別に見ると、英国および日本における対米好感度は、ともに41%だったが、フランスで31%、ドイツで26%と、それぞれワーストとなった。

 第2次大戦後、自由主義世界の盟主として不動の地位を保持し続けてきた超大国が、ここまで国際的評価を下げたのは、現代史上の“大事件”と言うべきだろう。

 並行して、同じ13カ国における同年度の「米大統領信頼度」では、平均で16%という無残な結果をさらけ出した。

 ところが、トランプ大統領に代わりバイデン氏がホワイトハウス入りした2021年6月時点の同調査結果によると、13カ国における平均的「対米好感度」は、一挙に64%と倍近くにまで跳ね上がった。

 「米大統領信頼度」も77%と、前大統領にくらべ実に4倍にまで劇的に反転した。

 さらに「Pew Research Center 」は今年度、これらとは別に16カ国を対象に、バイデン政権の政策別の支持率調査を実施したが、トランプ政権下で離脱した「国際保健機構」(WHO)と、地球温暖化対策のための国際取り決め「パリ協定」の両方に復帰を果たしたことについて、いずれも85%以上という高い支持が示された。

 これらの数字が示す通り、トランプ大統領個人の資質および人格に対する国際的信頼度は、史上最低を記録、その結果、米国に対する国際信用度と評判も想像以上に厳しいものになったことが如実に裏付けられた。

6. 環境保護政策の大幅後退

 トランプ政権は就任当初から「環境保護より産業重視」の姿勢を明確に打ち出し、それ以前の歴代政権の環境保護政策からの有無を言わせぬ転換に乗り出した。

 国際舞台では、大統領は「パリ協定」からの離脱を発表したほか、第44回(カナダ・ケベック)、第45回(フランス・ビアリッツ))G7サミットにおいては、いずれも気候変動問題を議題とした会合に参加せず、途中で会場を立ち去るなど、他の先進諸国との対立ぶりが浮き彫りにされた。

 国内面では、オバマ前政権が推進した各方面にわたる環境保護政策・規則のうち、実に98項目について撤廃または緩和措置を打ち出した。

 具体的には、①50州全域の河川、沿岸地帯における石油・天然ガス掘削の再認可(2018年)②北極海域「国立野生動物保護地域」開発計画の作成(2019年)③環境保護団体が反対してきたカナダ・アルバータ―-米国ネブラスカ間を結ぶ大パイプライン建設計画「KeystoneXL」の承認(2020年)④自動車排気ガス大幅緩和(2020年)―などが含まれている。

 退任後も、「米国経済をスローダウンさせる気候変動対策に断固反対」「世界は暑くなることもあれば、冷え込むこともある。自然サイクルだ。自分は科学について本能的センスを持っている」「気候変動説は科学的根拠がなく、中国の陰謀」といった偏見に満ちた主張を繰り返している。


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