7. 国際機関軽視・脱退
歴代大統領の中で最も際立ったのが、独善主義に基づく国際機関からの離脱および軽視政策だった。
まず、2017年10月、アラブ寄りの姿勢を批判し、「国連教育科学文化機関」(UNESCO)からの脱退を発表したのを皮切りに、2018年6月、各国の人権状況を審査し、重大な人権侵害に改善を求める「国連人権理事会」(UNHCR)、そして同年8月には、「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA)からも正式脱退を表明した。
さらに、各国におけるコロナ感染が深刻化し、パンデミックとなった2020年5月には、国連機関の中でも大きな影響力を持つ「世界保健機関」(WHO)についても、大統領自らが、脱退意向をちらつかせる一方、具体措置として拠出金支払い拒否、同機関との「関係停止」を発表、世界に衝撃が走った。
世界164カ国および地域が加盟する「世界貿易機関」(WTO)についても、あからさまな批判を繰り返したほか、各国間の紛争問題を処理する上級委員会への米側仲裁委員任命を最後まで拒否し続けた。
これら一連の措置の背景にあったのが、大統領就任当初から内外に表明してきた「アメリカ・ファースト」主義だった。アメリカの意に沿わない国際組織を無視し自国の国益最優先を貫いてきた。
しかし、グローバリゼーションが加速する今日、いかなる国であれ各国との相互依存を抜きにして存在し得ないことは明白だ。
そして皮肉にも、前政権がとった「孤立主義」の4年間に、最大のライバル国である中国が、その空白をついて、各国際機関通じ国際社会での存在を一段と高めてきた。
以上、トランプ政権が米国内そして世界に残した大きな「負の遺産」は、現代史に克明に書きとどめられるべきだろう。
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