2024年11月21日(木)

World Energy Watch

2012年11月22日

 なぜ、欧州では天然ガスの消費が減少し、石炭消費が増えているのだろうか。それは、米国で開発が進むシェールガスが欧州のエネルギー供給にも大きな影響を与えているからだ。

シェールガスが変えるエネルギー供給の世界

 日本の新聞、テレビの報道では、シェールガス革命によりあたかも世界中の天然ガスの価格が下落しているように伝えられている。「日本の電力会社は米国の天然ガスの6倍も高い天然ガスを購入している。総括原価主義のために、コスト意識がないためだ」と、日本の電力会社に購買能力がないように、しばしば伝える「報道ステーション」がいい例だ。

(図-3) 欧米の天然ガス価格推移
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 実際に天然ガス価格が下落しているのは、米国だけだ。環境問題からシェールガスの生産に慎重な国も多い欧州では、シェールガスの生産はまだ本格化していない。ガス価格も全く下落していない。当たり前だ。最大サプライヤー、ロシア・ガスプロムからの長期契約に基づく価格は、日本の電力会社が海外サプライヤーと締結している契約と同じく、原油価格にリンクしている。報道ステーションは欧州も総括原価主義というのだろうか。

 米国と欧州の天然ガス価格の推移を図‐3に示している。米国ではシェールガスの生産が本格的に開始されて以降、天然ガス価格は急速に下落した。一方、欧州では天然ガス価格は上昇している。その価格差は4倍から5倍になっている。

シェールガスの生産増が招く石炭の輸出増

 米国ではシェールガスの生産増により、エネルギー供給では、いくつかの変化が生じている。一つは石炭の国内消費減少だ。米国の石炭生産量は年間10億トンと中国に次ぐ世界2位だ。これだけで、日本の一次エネルギー消費を賄えるほどの量だ。この生産の90%以上は国内の発電所で使用されている。米国が日本の4倍もの発電を行いながら電気料金が安い理由は、国内で生産される石炭で約半分を発電しているためだ。


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