2024年11月23日(土)

World Energy Watch

2012年11月22日

米国のエネルギー政策は
日本にも大きな影響を与える

 4年前の大統領選ではオバマ大統領は、中東、ベネズエラへの原油依存度を下げるために、10年以内に中東、ベネズエラからの輸入量以上に原油を節約すると宣言した。また、再生可能エネルギーによる発電量を2012年までに10%に25年までに25%にする目標、排出枠取引制度導入など、多くのクリーンエネルギー政策を「米国のための新エネルギー戦略」として発表した。

 その政策の多くは実現が疑問視されているが、「米国は10年以内に世界1位の産油国になる」と国際エネルギー機関が予想する根拠となっているシェールガスとシェールオイルの生産増により、4年前に宣言した、中東、ベネズエラへの依存度低減は確実に実現されそうだ。米国の中東への依存度の減少は、日本のエネルギー政策にも当然大きな影響を与える。

 日本は石油の80%、天然ガスの20%をホルムズ海峡経由輸入している。米国の中東での存在感が薄れ、不安定化が増すと、原油価格に大きな影響を与える可能性がある。シェールガスの生産増の価格への影響が米国でしか見られないように、新興国での需要増が続く中ではシェールオイルの生産による価格への影響は小さい可能性がある。

 原油価格が上昇した場合には、天然ガスも石炭の価格も上昇する。脱原発を目指し、原子力というオプションを日本が失っていたならば、化石燃料の中で多様化を図っていたとしても、欧米諸国以上の打撃を日本だけが受けることになるだろう。

グリーンビジネスも夢の世界

 ワシントンポスト紙が日本の戦略を夢と呼ぶのは、それだけ、現実を見据えていないということではないのか。化石燃料を依然中心に置く欧米の現実路線とは対照的だ。野田首相は脱原発とあわせグリーンビジネスも選挙の争点として挙げたが、欧米では太陽光発電関連メーカの破綻が相次いでいる。中国製太陽電池に課税を決めた米国政府に続き、欧州委員会も中国製太陽電池を不当廉売の疑いで調査している。

 不振は太陽電池メーカだけでない。かつては世界シェアの3分の1を保有していた風力最大手のデンマーク・ベスタスの生き残りに関する報道も欧州では出始めた。現在交渉を行っていると報道されている三菱重工との提携が失敗した場合に生き残れるか疑問視する見方が出ているのだ。株価は2008年に付けた最高値の、ほぼ30分の1に落ち込み、2015年に償還される社債の金利は20%近くになっている。

 野田首相は、欧米の再エネ関連企業が中国企業に追いつめられている状況を知ったうえで、グリーンビジネスで経済成長が可能と信じているのだろうか。


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