2024年12月23日(月)

中国はいま某国で

2012年12月11日

 中国エネルギー・電力産業の海外進出が急だ。石炭火力から風力まで、アジアは無論バルト海の国エストニアなど各地で投資や建設を手掛ける。

バリ島に火力発電所
中国華電が供給元に

 多くは低利融資とのセットでいわばお得感が強く、受注の好調につながる。重要基幹部門への進出は、外交上の梃子(てこ)をも中国にもたらす。

 インドネシアの発電需要に深く食い込んだのは、国営企業・中国華電集団である。2012年8月28日、観光で名高いバリ島の北部で、石炭火力発電所建設の起工式が催された。工事規模は6億3800万ドル、発電設備3基を造る一期工事で到達予定の発電能力は426メガワットという。我が国火力発電所に当てはめると小ぶりの規模だが、バリ島では最大になる。

 クリーンだという石炭の焚き方は宣伝通りか、設備の信頼性はどれほどかなど未知数の要素が残るとはいえ、すべてを担当するのが中国華電である。起工式には、同社で序列6位の副社長に加え、開発援助資金を出す国家開発銀行と、輸出保険を担う中国出口信用保険公司の代表者も参加した。

 完工後には中国華電が電力供給・販売元となって、バリ島の電力需要を握るかたちになる。同社はインドネシアで他にもう1カ所、シンガポールに近く中国語人口が多いバタム島でも発電所を完成させ、維持運営している。

 これを報じた新華社電によると、インドネシアと中国が05年に「戦略的パートナーシップ」へ向けた各種協定を結んでこの方、インドネシアの電力・インフラ部門に中国が投じた資金は既に70億ドルを超す。具体例を報道で追う限り、インドネシア側と合弁企業を設ける場合は中国企業が株式の過半を握る例が散見される。基幹インフラの支配を中国に委ねてよいと、インドネシアは考えたのだろうか。

 戦後の日本が、最も多額の政府開発援助(ODA)を注ぎ込んできたのがインドネシアだった。世論調査が毎回示す国民の対日感情も極めて良い。けれども最近、インドネシア政府はかつてほど東京の言うことに耳を貸さなくなったと漏れ聞いていた。理由の一半はここら辺りにあるかもしれない。


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