2022年12月5日(月)

知られざる高専の世界

2021年9月30日

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堀川晃菜 ( ほりかわ・あきな)

サイエンスライター・科学コミュニケーター

新潟県出身。長岡高専への進学を機に理系の道へ。東京工業大学生命理工学部に編入学。同大学大学院生命理工学研究科修了。農薬・種苗メーカーでの勤務を経て、日本科学未来館の科学コミュニケーター。その後、WEBメディアの記者・編集者を務め、現在はフリーランス。著書に『化学技術者・研究者になるには』(ぺりかん社)、『みんなはどう思う? 感染症』(くもん社)。

地域社会と密接な「生きた教育」

 高専こと、高等専門学校は高大一貫5年間の工学教育を実施する高等教育機関だ。大学とは立地にも大きな違いがある。大学は約2割が東京に集中しているが、全国57校ある高専の大半は国立で、各都道府県に分散している。

 玉田教授は、高専には「教育」「研究」「地域貢献」の3つの側面があるという。学術研究の成果が必ずしも論文に掲載されなくとも、地域・社会の発展に貢献する活動は業績として評価される。そうした風土が教員や学生たちを後押ししている。

 iMecはまさに高専の3つの顔を併せ持つセンターと言える。行政機関や民間企業等の建設技術者を受講者として幅広く受け入れ、リカレント教育の場として大きな役割を果たしている。一方で現役学生にも受講の機会を設け、夏休みのインターンシップには毎年、全国の高専から学生が参加。キャリア教育として、建設業界や公務員に内定した学生に受講を呼びかけている。

(写真=舞鶴高専提供)

 講習会では座学に加え、コンクリート橋など実物を前に劣化状況を学ぶといった実践的な技能トレーニングが行われる。講習の前後ではe-ラーニングによる事前学習とフォローアップを行う。

昨年夏に民間企業の技術者を対象に行われた講習会。橋梁点検の演習などを行った(写真=舞鶴高専提供)

 iMecのプログラムには、橋梁点検の基礎編、応用編の他、コンクリートの品質管理など複数用意されている。なかでも実務経験者を対象とした橋梁点検の応用編は、修了すると橋梁点検技術者に認定される。国土交通省の登録資格(更新制)であり、技能維持と継続的な人材輩出につなげる考えだ。

 過去に橋梁点検の基礎編・応用編を受講した舞鶴市役所 建設部 土木課の櫻井大輔さんは次のように話す。

「応用編では、実際にコンクリート橋や鋼橋などの点検を行い、点検調書を作成しました。講習会の修了後もOB会を立ち上げ、他の市町村からの参加者と交流が続いています。また、舞鶴市は08年から舞鶴高専と橋梁の長寿命化に関する共同研究を進めているのですが、こうした日頃からの関係性に救われたのが、クレインブリッジの問題発覚時でした」

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