2024年11月24日(日)

日本の漁業は崖っぷち

2012年12月21日

アイスランドVSノルウェー・EUのサバ戦争

 日本では個別割当て制度でないがために発生する経済的損失が、起こるべくして起きています。その一例をご説明します。11月、1日に4,000~7,000トンものマサバが数回、銚子に大漁に水揚げされました。残念だったのは、水揚げされたサバは良いサイズだったのに魚価が安かったことにあります。

 今年は2011年3月に起きた震災の影響で、マサバの中・大型の水揚げが多いと予想していました。自説ですが理由は簡単です。震災後の春~秋にかけての水揚げが激減し、その魚の一部が大きくなって漁獲されたのです。北海道沖で30数年ぶりに中・大型のマサバが今期の漁期中に全部で9,000トンほど漁獲され話題になりましたが、これも同じ理由と考えられます。

 北欧のサバの回遊パターンは、遊泳力がある大型のサバほど、水温が低い北に向かって餌を追いかけるため、それらが漁獲されるという結果が出ています。ノルウェー北部に回遊するサバは大型で餌を食べており、ノルウェー南部で漁獲されるサバよりも一回り大きくなっています。

 また、近年ノルウェー鯖が小型化しているのですが、これは北欧サバがこれまで回遊していなかった北西の海域=アイスランドの排他的経済水域(EEZ)に2007年から回遊するようになったことに原因があると思われます。回遊が始まった当初、アイスランド側からは大型のサバだけが水揚げされているという情報をもらっていました。この大型のサバを大漁に漁獲したために大型の魚が間引きされてしまい、遊泳力が弱い中・小型がノルウェーで漁獲されるというパターンが続いてしまったのでしょう。そのためサイズ組成が崩れて大型サイズが減ってしまったものと考えられます。

 アイスランドでのサバ漁の問題が複雑なのは、同国のEEZ内でのサバ漁であるために、漁獲自体は国際法上問題がないという点につきます。ノルウェーやEUが、自分たちが守ってきた資源が乱獲されていると主張しても、アイスランドとしては、「自分たちの海に餌を求めて泳いで来ている魚を獲って何が悪い?」という話になってしまい複雑なのです。

 EUとノルウェー側の漁業者はアイスランドのサバ漁に対して怒っていますが、これは、アイスランドが多く獲る分、自国の漁獲枠配分が減る恐れが出てきていることに対する怒りであり、個別割当やTACの制度そのものに対する怒りとは全く関係がないのです。そもそも彼らにとって、TAC、個別割当制度が厳格に守られるべきというのは漁業を続けていく上での大前提なのですから。


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