2024年4月20日(土)

新しい原点回帰

2022年1月29日

 もちろん、固定客ばかりではない。逗子に観光客が押し寄せた時代もあった。戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、庶民の夏のレジャーとして「海水浴」が大ブームとなり、逗子は人気を博した。逗子駅に東京から列車が到着すると、逗子駅前の広場が人で埋め尽くされる光景も珍しくなかった、という。逗子駅から葉山やその先の油壺、城ヶ崎へとタクシーを利用する客もいた。

逗子駅前にあった古い社屋。1930年代後半と見られる
創業者の菊池順造氏。ナンバー神623の車輌は、1937年式クライスラー号

進む高齢化で高まった
生活の足としての役割

 しかし、時代は大きく変わる。逗子の町もご多分にもれず高齢化が進んだ。通勤のために駅まで送迎していた得意客がリタイアしていった。逗子菊池タクシーの保有車両もピークだった2003年の41台から36台になった。

 だが、タクシー利用者がめっきり減った、というわけではない。高齢化で足腰が弱った分、買い物や病院通いなど生活の足としてのタクシーの役割はむしろ増しているのだ。病院への送迎では横須賀や大船、横浜といった中長距離の仕事も増えている。要介護の高齢者がタクシーを利用するケースが急増してきた。

 そんな客層の変化に対応して、ドライバー教育を大きく変えた。20年ほど前のことだ。「旧ホームヘルパー2級」などの資格取得を奨励したのだ。のべ20人ほどのドライバーが資格を取得したという。その頃、都会のタクシー会社では乗降に時間がかかる高齢者を嫌うドライバーがまだまだ多くいた。収入が歩合制で、まさに「時は金なり」のドライバーにとって、致し方ない面もあった。だが、「常連客」が中心の逗子菊池タクシーでは、「不自由を感じるお客さまを積極的にドライバーが手助けする」(菊池社長)方針に転換したのだ。

「介護タクシー」も早々に導入した。資格を持ったドライバーが病院などへの送迎だけでなく、付き添いや買い物の手伝い、ベッドからベッドまでの移動介助なども行う。メーター料金の他に、ヘルパー指定料金500円や、30分1500円の介護料金を受け取る。もちろん、車椅子ごと乗れるユニバーサルデザインの車両も4台導入している。逗子市役所から「移送サービス」の認定を受けた人なら利用料金の9割が介護保険の特別給付の対象になる。

車椅子のまま乗車できる介護タクシー

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